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2004/04/04

その41 ― ピンチョン Lot 49

The Crying of Lot 49 (Perennial Classics)

前回…] [目次


 第3章冒頭:
 Things then did not delay in turning curious. If one object behind her discovery of what she was to label the Tristero System or often only The Tristero (as if it might be something's secret title) were to bring to an end her encapsulation in her tower, then that night's infidelity with Metzger would logically be the starting point for it; logically. (p31)

《それ以後、事態は遅滞なく奇妙な方向へと発展することになった。エディパが〈トライステロ・システム〉あるいは、しばしば単に〈ザ・トライステロ〉と(まるで何かの秘密の暗号であるかのように)呼ぶようになるものを発見した背後に一つの目的があって、それが彼女の塔に幽閉されている状態に終止符を打つことであると想定するならば、あの夜のメツガーとの不倫こそ論理的にはその出発点になると言えよう――論理的には。》p51/p57

 この書き出しはかなり大胆で、読み返すほどに「ピンチョンが仕掛けてきた」と感じ、うれしくなってしまう。
 2つめの文章、“If one object...”から最後の“...starting point for it; logically.”まで続く長い一文で、何が起きているか。

‘If ……, ~~’なら「もし……ならば、~~だろう」の仮定法過去だが、ここでは前半の仮定のIf 節(……)がずいぶん長く、thenから先が後半の節(~~)になる。
 If 節の骨格は、「もし彼女の発見のうしろにある目的が塔での幽閉を終わらせることであるならば」というシンプルなものである(塔に幽閉されているというのが、単調な日常に囚われ身動きできないエディパの自己イメージだった)。仮定の内容を入り組んだものにしているのは、途中でいきなり入ってくる〈トライステロ〉という名前だ。

 Tristeroという語はここではじめて出てきた。
 Lot 49 の語りは、説明なしで地の文に未知の名前を投げ入れ、そのうえ同時に、それはエディパがこれから発見し、この名で呼ぶようになるものだと一息に告げてしまう。そこでIf 以下の前半部は、

「彼女が〈トライステロ〉の名で呼ぶようになるものを発見したうしろにある目的が塔の幽閉を終わらせることであるならば、」

というふうになる。
 地の文は、仮定の中でこのあとの展開を予告し、読者に押し付ける。「そうなのか」と受け入れるしかない。

 この強引な語り方による効果として、地の文とエディパのあいだにギャップができる――というか、もとからあるギャップが強調される。

…続き

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