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その36 ― ピンチョン Lot 49
競売ナンバー49の叫び

前回…] [目次


 二人の見つめるテレビの中で、潜水艦は激しい攻撃を受ける。艦内は浸水し、愛犬が溺れる。子役時代のメツガーが演じる男の子は、機械のショートで感電し、悲鳴をあげ事切れる。父親がお別れの演説をする。エンドマーク。映画は終わる。
 三人は助からなかった。エディパの予想が当たった。
Oedipa had leaped to her feet and run across to the other wall to turn and glare at Metzger. "They didn't make it!" she yelled. "You basterd, I won."
"You won me," Metzger smiled. (p30)

《エディパは飛びあがって、向こう側の壁まで走って行き、振り向いてメツガーを睨みつけていた。「助からなかったじゃないの!」と彼女は叫んだ――「ひどいわ、私の勝ちよ」
「きみは、ぼくを勝ち取った」とメツガーが微笑した。》p49/p56

その32」では自分からメツガーを押し倒したように見えるわけだが、彼の望み通りに動いてしまったあとで、エディパは自分が賭けには勝っていたと知る。もう遅い。賭けに勝って勝負に負けた。早い話が、ていよくやられちゃった、みたいな書きぶりである。

 映画は生中継ではない。見はじめた時点で(いや、見はじめる前から)ラストまでできあがっている。その筋書きをメツガーは知っていた(なにしろ出演している)。
“すでに完成しているもの、おしまいまで決定されているもの”を使って、エディパは弄ばれてしまったようなものだろう。自分の知らないこと(映画の展開)について、知っている人間と賭けをするから、賭けができるなどと思うから→その27、しっぺ返しを受ける。

 メツガーは何度となく「死ぬ前のピアスがきみをどう言っていたか知りたくないかな」ともちかけ、その度にエディパは「知りたくないわ」と突っぱねていた。
"What did Inverarity tell you about me," she asked finally.
"That you wouldn't be easy."
She began to cry.
"Come back," said Metzger. "Come on."
After awhile she said, "I will." And she did.

《「インヴェラリティは私のことを何て言ったの」とうとうきいてしまった。
「きみをものにするのは容易じゃないって」
 彼女は声をあげて泣き出した。
「こっちへおいで」とメツガー ――「さあ」
 しばらくしてから彼女は「ええ」と言った。そして彼の言葉に従った。》

 第2章はこれで終わり、次の章から二人は行動を共にすることになる。

…続き
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