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その33 ― ピンチョン Lot 49
The Crying of Lot 49 (Perennial Classics)

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so weak she couldn't help him undress her; it took him 20 minute, rolling, arranging her this way and that […] She may have fallen asleep once or twice. (p29)

《まったく力が抜けてしまって、彼が服をぬがせようとするのに手を貸すこともできない。二十分かかった。彼女の体をころがし、あっちに向け、こっちに向け[…] 。そのあいだ一度か二度は眠ってしまったかもしれない。》p48/p54

 ちょっとストップ。おかしい。
 そんな時に眠るなよ、というのではなくて(眠気は何ものにも勝る)、おかしいのは
She may have fallen asleep
《眠ってしまったかもしれない

という部分である。
 ここはエディパ自身の内省でも回想でもない、ただの地の文のはずである。小説の基盤になる語りだ。それが「かもしれない(may)」と不確かな言いまわしになっている。
 たとえば、エディパの部屋にメツガーという男が「来た」。映画が「はじまった」。スプレー缶が「ぶつかって」洗面台の鏡が「割れた」。それなのにここだけ、「眠ってしまったかもしれない」と語られる。どういうことだろう。

 Lot 49 の注釈書であるCompanion の著者もこの部分に目をとめて、《語りの声が信頼できなくなり、小説に書かれていることを受け入れていいのかそうではないのか判然としなくなる、ここはそういう瞬間のひとつである》、みたいな意見を紹介している(p51)

「あったかもしれないし、なかったかもしれない」、そんなことを事実(「あった」)の描写のあいだに挿入するのは変である。
 なぜなら、これを許容してしまうと――つまり、この小説では「あったかもしれないし、なかったかもしれない」ことも語られている、としてしまうと――Lot 49 ぜんたいの語りが信用できなくなってしまうからだ。

…続き
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