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2004/04/10

その118 ― ピンチョン Lot 49

競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)

前回…] [目次


 エントロピーは、でたらめさ・乱雑さを測るものさし、というふうに説明されることが多い。
 この考え方がはじめに使われるようになったのは熱力学の分野だという。

 閉じた系の中で、温度が高いものと温度の低いものが接している場合、前者から後者へと次第に熱が移り、しまいには両方が同じ温度になる(熱平衡)。この熱が移動する方向は一方通行で、不可逆的である。
 温度差があればエネルギーを取り出せるけれども、放っておくと状態は熱平衡に向かい、温度差はなくなっていく。この変化を“エントロピーが増大していく”ととらえると、いろいろなことにうまく説明がつくようになった。でも、それがどうして「乱雑さ・でたらめさ」の増加なのか。

 温度が高いというのは分子の動きが激しいということ、低いというのは動きがおとなしいということで、ちがいがある。激しいにしろおとなしいにしろ、それぞれがそれぞれだけで集められていれば(温度が「高い」「低い」で区別されていれば)、ふたつのグループは整理されていることになる。そんなふうにはじめは分かれていたふたつのグループも、時間の経過とともに、乱雑に入り乱れていって、混ざりきった状態が熱平衡である。混ざったものは、自然には分かれていかない。
 外から手を加えない限り、でたらめでない状態(エントロピーが小さい)は、必ず、もっとでたらめな状態(エントロピーが大きい)に向かう。方向を逆にして、乱雑に動き回る分子の動きをそろえ、エネルギーに変えることはできない。

 これを確率の考え方から見ると、実現する確率が低い状態は、実現する確率がもっと高い状態へ移っていく、ということになる。「整然と区別されている状態」よりも、「乱雑に混ざっている状態」のほうがずっと場合の数が多いので、実現する確率が高い。そして、実現するのはつねに確率の高いほうである。“確率には勝てない”、というのと、上の“エントロピー増大の過程は不可逆的”というのは、同じことを言っている。
 ところで「その92」で、こういうメモをした。

■ 熱力学の第二法則
・持っているエネルギーのすべてを何か意味のある作業に使うことはできず、かならずエネルギーの一部を無駄に捨てなくてはならない
・分離の状態は、やがて混合という結果に追い込まれる

 エネルギーの総量は不変、という熱力学の第一法則だけから見ると可能であるように思える永久機関(熱機関から生まれたエネルギーをまたその機関を動かすのに使う)は、第二法則から否定される。エネルギーは、総量としては減らないが、しだいに使えないかたちに変わっていく。
 この第二法則が述べていることにはいろんな表し方があって、エントロピーの考え方を使った表現法もそのひとつ。使えるエネルギーは減っていく、という法則は、エントロピーは増えていく、とも言い換えられる。

 エントロピーは概念なので、顕微鏡でも見られないし、それじたいを測量することもできないけれど、これを使うと第二法則がうまく説明できるし、計算によって量を測る式だってできている。

…続き

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