趣味は引用
その31 ― ピンチョン Lot 49
The Crying of Lot 49 (Perennial Classics)

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 エディパは映画の質問を始める。
 ベイビー・イゴールはあの潜水艦でトルコに行ったのか?
 「ノー」 → イヤリングの片方。
 別の潜水艦で行ったのか?
 「ノー」 → イヤリングのもう片方。
 では陸路で行ったのか?
 「そうかもしれない」 → 次のイヤリングの片方。
"Another earring?" said Metzger.
"If I answer that, will you take something off?"
"I'll do it without an answer," roared Metzger, shucking out his coat. (p28)

《「また、イヤリングかい?」とメツガーは言った。
「その質問に答えたら、あなたも何か取る?」
「答えなくても取るよ」とメツガーは大声で言って上衣をぬいだ。》p47/p52

 ゲームは進行し、エディパは身につけている物をひとつずつ外す。
 ところで、探求というものが、まわりの余計なものを取り除いて中心にある真相をめざす行為であるならば、このお遊びのストリップごっこもまた、「徐々に核心に近づく」点で探求と同じパターンにのっとっているといえる。
 しかし、イヤリングを取ってもブレスレットを外しても、メツガーはもうズボンを穿いていないのに対して、エディパはちっとも裸には近づかない。すでに彼女が巻き込まれてしまった探求、ピアスの遺産をめぐる旅の進みゆきを暗示しているようでもある。
Things grew less and less clear. At some point she went into the bathroom, tried to find her image in the mirror and couldn't. She had a moment of nearly pure terror. Then remembered that the mirror had broken and fallen in the sink. "Seven years' bad luck," she said aloud. "I'll be 35." (p29)

《ものがみな鮮明度をうしなって行った。ある時点で化粧室へ行って、鏡にうつった姿を見ようとしたが見つからなかった。一瞬、恐怖の極限と言ってよかった。それから鏡がこわれて洗面台に落ちたことを思い出した。「悪運は七年つづく、か」と声に出して言う――「そうしたら私、三十五になっちゃう」》p47/pp53-4

 ここではじめてエディパの年齢がわかった。28歳。
 しばらく前に、この小説の舞台が何年なのか考えてみた→その1316。答えは「よくわからない」だったが、ここでピンチョンが1937年生まれだという事実から、仮にエディパを自分と同じ年齢に設定したとすると、作中の「現在」は1965年ということになる。もちろんこれも推測にすぎない。

…続き
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