趣味は引用
その105 ― ピンチョン Lot 49
競売ナンバー49の叫び

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〈テュルーン、タクシス〉。〈ウェルズ、ファーゴ〉。〈小馬速達便〉。みんな民間の郵便組織である。そのことごとくを、黒衣の集団が襲った記録がある。
 これはいったいどういうことか。黒衣の集団とは何者か。私設郵便の歴史に詳しいファローピアンは、しかし、はかばかしい答えをエディパに与えてはくれない。
 黒衣の集団について、ファローピアンもまだ正体をつかんではいなかった。史碑の存在は知っており、彫られている内容について役所に問い合わせの手紙を出しているが返事はない。予想では、いつか返事が来るとしても、せいぜい史料が届くのが関の山で、その史料も「古老の記憶では」程度の当てにならないものでしかないだろうと言っている。
"[…] There's no way to trace it, unless you want to follow up an accidental correlation, like you got from the old man."
 "You think it's really a correlation?" She thought of how tenuous it was, like a long white hair, over a century long. Two very old men. All these fatigued brain cells between herself and the truth. (p74)

《「[…] 追跡する方法なんて、ないんです、あなたが爺さんからお聞きになった話のように、偶然の相関関係を追跡するしかありません」
「ほんとうに相関関係があるとお思い?」 相関関係と言っても何とかぼそいものだろうか。一本の長い白髪のようなものではないか、一世紀以上にわたる白髪一本。二人の非常な老人。自分と真実のあいだの数知れぬ疲弊した脳細胞。》p115/p129

 またものすごいことを言っている。「偶然の相関関係(an accidental correlation)を追跡するしかありません」とは、また次の偶然の一致が出てくるまで待つほかにやれることはありません、ということだ。何事かを探求している人間に対して、これはアドバイスになっているのだろうか。

 そしてエディパは、そもそもの相関関係を疑っている。いくつかの「私設郵便組織&黒衣の集団」というペアには本当につながりがあるのかどうか。ここで彼女が気にしている「二人の非常な老人」は、〈小馬速達便〉の話をしてくれたトート氏と、実際に黒衣の集団と戦ってトート氏に体験談を語った彼の祖父のことである。手掛かりといっても、こんな老人の伝聞が信頼できるものなのか。
 ファローピアンは反体制の人だから、民営の郵便を圧殺しようとした黒衣の集団を、北部連邦政府の手先ではないかと考えている。何にせよ郵便組織との関係はありそうだ。だが、それ以上はファローピアンは乗ってこない。コーテックスが落書きし、トート氏の祖父が持っていた指輪にも刻まれていた「WASTE印」を見せても反応は薄い。
 "It was in the ladies' room, right here in The Scope, Mike."
 "Women," he only said. "Who can tell what goes on with them?" (p75)

《「婦人用トイレに書いてあったのよ、この〈ザ・スコープ〉のトイレよ、マイク」
「女たち」と彼は言っただけであった――「女たちってのは何を考えているものやら」》

 何も知らないようにも見えるし、知っていて隠しているようにも見える。しかしエディパがそれ以上問い詰める姿は書かれていない。ここでもまた、例の「ためらい」が働いたのかも知れない。

…続き
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