2004/04/08

その102 ― ピンチョン Lot 49

競売ナンバー49の叫び

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 トート氏の話が続いている。彼の祖父は〈小馬速達便〉の配達人で、インディアン殺しを好む困った人物だったが、ほかにも、黒い格好をした者たちと戦ったのだという。
 "Dressed all in black," Oedipa prompted him.
 "It was mixed in so with the Indians," he tried to remember, "the dream. The Indians who wore black feathers, the Indians who weren't Indians. My grandfather told me. The feathers were white, but those false Indians were supposed to burn bones and stir the boneblack with their feathers to get them black. It made them invisible in the night, because they came at night." (p73)

《「真っ黒なものを着ていたんですね」とエディパが誘導する。
「それがインディアンの話とこんがらがってしもうてのう」と、思い出そうとしながら「夢の話じゃが。黒い羽根をつけたインディアン、インディアンではなかったインディアンなんだのう。爺さんが話してくれたもんじゃ。頭につける羽根は白いんじゃが、にせのインディアンたちは骨を焼いてのう、その骨炭を羽根でかきまわして黒くするんじゃ。そうすると夜目には見えなくなる、彼らは夜に襲撃してくるんじゃから。」》p113/p127

 黒い格好、というだけでも即座に連想が働くのに、さらに「骨炭で羽根を黒くする」という。これは『急使の悲劇』で、悪役のアンジェロが殺した敵兵の骨炭をインクに加工して使っていたエピソードを思い起こさせる→その76。骨の炭は、さらにピアスの事業にまでつながる物品なのだ。
 その黒い格好をした者たちがインディアンでないならば、いったい何だったというのか? エディパが訊ねると、トート氏は自分の持ち物袋から「鈍い金色の認印指輪」を取り出して見せる。
"My grandfather cut this from the finger of one of them he killed. Can you imagine a 91-year-old man so brutal?" Oedipa stared. The device on the ring was once again the WASTE symbol. (p74)

《「爺さんがこいつを、殺した彼らの中の一人の指から切り取ったんじゃ。九十一歳の爺さんにそんなむごいことができると思いなさらんじゃろ?」。エディパは凝視した。指輪の模様はまたしてもWASTE印であった。》p114/p128

 トイレの壁の伝言→その48、コーテックスの落書き→その90に続いて、WASTE印の指輪ときた。そして、それは〈小馬速達便〉を襲った黒い偽インディアンの持物であった。
“郵便組織に敵対する、黒衣の集団"として、この3つが並ぶ。

(1)『急使の悲劇』の中で、大手郵便〈テュルーン、タクシス〉の格好をしたニコロを殺す、黒ずくめの暗殺者たち→その75
(2)運送会社〈ウェルズ、ファーゴ〉の郵便配達12人を虐殺した、黒衣の覆面強盗団→その98
(3)〈小馬速達便〉を襲撃する、黒い敵

(1)には「トライステロ」の名が与えられており、
(2)の残された手掛かりは頭文字「T」かもしれず、
(3)の指輪に刻まれたマーク(WASTE印)は、ふたつの落書きを通してすでにエディパの身辺に迫っている。

 いま、読者の感度はエディパと同調しているので、彼女の反応はよくわかる。「震えあがる」のだ。

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