2004/04/09

その96 ― ピンチョン Lot 49

競売ナンバー49の叫び

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 エディパが「WASTE印」と呼んでいる例のマークをコーテックスが落書きしていた封筒は、話題にあがっていたジョン・ネファスティス当人から届いたものにちがいない。あるいは似ただれかから。
 彼女はそう決めつける。あのマークを共有する組織があるのだと。
Her suspicions got embellished by, of all people, Mike Fallopian of the Peter Pinguid Society. (p70)

《彼女が疑惑を濃くしたのは、何と、ピーター・ピングイッド協会のマイク・ファローピアンのせいであった。》p108/p121

 そうか、of all peopleで「何と」になるのか(すべての人間の中でいちばん意外、みたいな感じか)、という翻訳上の納得がまずあるが、どうして「何と」なのかというと、ファローピアンじしんが、ここに書いてある通り、〈ピーター・ピングイッド協会〉というこれはこれで1個の秘密組織のメンバーとして登場していた→その46からである。
 政府に対抗する一手段として、政府の独占事業である合衆国郵便を使わず、ヨーヨーダイン社の社内便という一種の私設郵便によって通信を行うのが〈ピーター・ピングイッド協会〉だった→その49
 そして、まさに酒場〈ザ・スコープ〉でそういう話を聞いている最中のことだったのだ、エディパがトイレの壁に「WASTE」の語と問題のマークを見つけたのは→その48
(いま、エディパがコーテックスのことをファローピアンと話し合っている場所も、やはり〈ザ・スコープ〉である)
"Sure this Koteks is part of some underground," he told her a few days later, "an underground of the unbalanced, possibly, […] " (p70)

《「そのコーテックスってのは何かの地下組織に入っているんだ」と彼は二、三日あと、彼女に言った――「ひょっとすると、精神不安定な人間の地下組織かもしれません。[…] 」》p108/p121

 ファローピアンが語るには、幼いころから発明家の神話を聞かされて育った人間も、ヨーヨーダインのような大企業に入ると、特許から何からすべてを会社に奪われ、個人が無名化された状態におかれてしまう。そうなったらどうするか?
"Of course they stick together, they keep in touch. They can always tell when they come on another of their kind.[…] " (p70)

《「もちろん団結するんです、連絡を取り合うんです。いつだって自分と同じ仲間に出会えば、わかりますよ。[…] 」》p109/p122

 蛇の道は蛇なのか、我田引水なのか、ファローピアンは自分のことを語っているようにも見える。団結と通信。自分たちがやっているのだから、コーテックスたちも同じことをやっている。
 これは無茶な推論に聞こえるが、エディパにとっては無茶どころではなく、重要な響きをもって伝わる。
She'd decided to come tonight to The Scope not only because of the encounter with Stanley Koteks, but also because of other revelations; because it seemed that a pattern was beginning to emerge, having to do with the mail and how it was delivered. (p71)

《エディパが今夜〈ザ・スコープ〉へ来ることにしたのは、スタンレー・コーテックスに会ったからというだけではなく、ほかにもいくつかの啓示があったからだ。つまり一つのパターンが出現しはじめ、それが郵便物と、その配達方法にかかわっているらしいのである。》p109/pp122-3

 ここから急にLot 49 は加速する。

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