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その92 ― ピンチョン Lot 49
The Crying of Lot 49 (Perennial Classics)

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 ただの空気しかないところから、温度差を作りエネルギーを取り出してしまう〈マックスウェルの悪魔〉。それを組み込んだ永久機関〈ネファスティス・マシン〉を動かすためには、もうひとつ必要なものがあるという。
 ・・・だがその前に書いておくと、このマシンがすごいのは、熱力学の第二法則を堂々と破っているからだと説明されている。いちおう、少しだけメモ。
(以下のまとめ方には確実に間違いが含まれているので、もっと正しく、かつ簡明な説明が見つかったら、どんどん差し替えたい)


■ 熱力学の第一法則
・エネルギーには様々な種類があり、形態が移り変わっていくことはあっても、全体としての量は常に一定である(エネルギー保存則)
・「ない」ところからエネルギーは取り出せない、無から有は作り出せない

 たしかに学校で習ったおぼえがある。これに比べると第二法則は難しい気がする。


■ 熱力学の第二法則
・持っているエネルギーのすべてを何か意味のある作業に使うことはできず、かならずエネルギーの一部を無駄に捨てなくてはならない
 (この本にあった表現)
・分離の状態は、やがて混合という結果に追い込まれる
 (この本にあった表現)

 ネファスティス・マシンの中では、悪魔が「速い分子」と「遅い分子」を選り分けるだけで熱機関を動かすことができるから、エネルギーが無駄にならず、意味ある作業に使われていることになる。
 それに、「速い分子」と「遅い分子」がごちゃごちゃになっているはじめの状態(混合)から、両者の選り分けられた状態(分離)にすることができるというのは、“分離 → 混合”という、一方通行であるはずの変化に真っ向から逆らっていることになる。
Since the Demon only sat and sorted, you wouldn't have put any real work int the system. So you would be violating the Second Law of Thermodynamics, getting something for nothing, causing perpetual motion. (p68)

《悪魔は坐って選り分けるだけだから、この系に真の仕事を何も加えたことにはならない。ということは、熱力学の第二法則を破って、無から有を生じさせ、永久運動をひきおこしていることになる。》p106/p119

 しかしエディパには、いまひとつそのすごさが伝わっていない。
 "Sorting isn't work?" Oedipa said. "Tell them down at the post office, you'll find yourself in a mailbag headed for Fairbanks, Alaska, without even a FRAGILE sticker going for you."
 "It's mental work," Koteks said, "But not work in the thermodynamic sense." He went on to tell how the Nefastis Machine contained an honest-to-God Maxwell's Demon.

《「選り分けるのは仕事じゃないの?」とエディパは言った。「そんなことを郵便局で言ってごらんなさい。郵便袋に詰めこまれてアラスカのフェアバンク行きよ、〈こわれもの注意〉の貼り紙もつけてはくれないわ」
「それは頭脳労働だけど」とコーテックス――「熱力学的な意味での仕事じゃないんだ」 彼は話を続けて〈ネファスティス・マシン〉に正真正銘の〈マックスウェルの悪魔〉が入っていることを説明した。》

 まだこれだけでは説明は終わらない。あらためて、装置を動かすには、もうひとつ必要なものがあるという。

…続き
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