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その29 ― ピンチョン Lot 49
The Crying of Lot 49 (Perennial Classics)

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 フィルムの順番が乱れ、ストーリーは狂ってしまう。テレビ局のミスなのか、メツガーが(あるいはほかのだれかが)あらかじめ仕組んでいたのかはわからない。
 それでも二人は、映画の展開を当てる賭けを続ける。今のシーンはさっきの潜水艦の場面より前なのか後なのかというエディパの問いを受けて、この賭けは進化する。
“Go ahead,” said Metzger, “ask questions. But for each answer, you'll have to take something off. We'll call it Strip Botticelli.” (p24)

《「よし、どんどん質問したまえ。しかし一つ答えるごとに何か一つ身につけているものを取ってもらう。〈ボッティチェリ式ストリップ〉と行こう」》p40/p45

 質問してヒントをもらうたびにエディパは服を脱ぐ、というルールが、たぶん酒の力でできあがる。賭けはむしろ退化した。
 そこで彼女は考えて、洗面所に飛び込むと、自宅から持ってきた衣類をある限り重ね着する。翻訳だけ引くと、《色とりどりのパンティ六着、ガードル、三足のナイロン靴下、ブラジャー三組、ストレッチ・スラックス二本、ハーフ・スリップ四枚、黒いシース・ドレス一着、サマー・ドレスニ着、Aライン・スカート半ダース、セーター三着、ブラウスニ着、キルトの部屋着、るり色のガウン、古いオーロン製のムームー。それからブレスレット、ブローチ、イヤリング、ペンダント》を彼女は身につける。どんな大旅行のつもりだったんだ。

 単純に数えても43回質問ができる雪だるま状態になったエディパは、鏡で自分の姿を見て笑い転げ、その拍子にヘアスプレーの缶を落として壊す。スプレー缶は中身を噴き出して洗面所を飛び、壁に当たっては跳ね返る猛スピードの凶器と化して、助けにきたメツガーをかすめる。
She was scared but nowhere near sober. The can knew where it was going, she sensed, or something fast enough, God or a digital machine, might have computed in advance the complex web of its travel; but she wasn't fast enough, and knew only that it might hit them at any moment […] (p25)

《彼女はこわくなったが、酔いはさめそうもなかった。缶は自分の行き先を知っている、と彼女は感じた。あるいは何かすばやいもの、神か、デジタル・コンピューターかがあらかじめ、この複雑な飛行の網を算出してあるのか。しかし彼女のほうには、そんなすばやさがなくて、わかっているのは、いまにもそれがぶつかるかもしれないということ[…]p42/p47

…続き
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