2004/04/07

その76 ― ピンチョン Lot 49

競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)

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『急使の悲劇』あらすじの続き。

 次の幕で、ジェンナーロとその軍が湖に到着し、ニコロの死体が発見される
「語るも恐ろしい状態」の亡骸が身につけていた、血まみれの手紙をジェンナーロは読みあげる(ただしここでも、死体そのものは舞台に出てこない)。
 ニコロが運んでいたのはもちろん、スカムリアの悪人公爵アンジェロがジェンナーロに宛てて書いた、言い訳の手紙だったはずである→その69。ところが。
It is no longer the lying document Niccolo read us excerpts from at all, but now miraculousy a long confession by Angelo of all his crimes,[…] (p57)

《それはもはやニコロが一部を観客に読んで聞かせた嘘のかたまりではなく、いまや奇跡によって、アンジェロが自分の犯したあらゆる罪をながながと告白する文面になっている。》p89/p100

 なんと手紙の内容が変わっているのである。しかも手紙は続き――
[…]closing with the revelation of what really happened to the Lost Guard of Faggio. They were -- surprise -- every one massacred by Angelo and thrown in the lake. Later on their bones were fished up again and made into charcoal, and the charcoal into ink, which Angelo, having a dark sense of humor, used in all his subsequent communications with Faggio, the present document included. (p57)

《結びは、ファッジオの〈消えた近衛兵〉にほんとうは何が起こったのかを明らかにする。近衛兵たちは――意外や意外―― 一人残らずアンジェロに虐殺され、湖に捨てられたのだ。のちにその骨は回収されて炭にされ、その炭をインクにし、それをブラック・ユーモア精神の持主であるアンジェロは以後ファッジオとの文通のすべてに用い、現在の手紙も例外ではない。》p89/p100

 ひとつめの引用にあった《いまや奇跡によって》(now miraculousy)と、ふたつめにあった《意外や意外》(surprise)という語り口には、この展開を説明する地の文が、こちらをおちょくっているような気配さえある。
 それはともかく、思い返してみれば、(1)兵隊たちの死体が湖に捨てられて、(2)のちに骨が回収され、(3)骨は炭となって再利用される、という、いま芝居の終盤でようやく明らかになった一連の流れ、これがピアス・インヴェラリティの関わっていた人骨の問題と《気味の悪いほど似て》いると教えられたたがために、エディパはここへ観劇に来ていたのだった。やっとつながった
(→その58その59。まとめると、第二次大戦中にイタリアの湖に沈められたアメリカ兵の骨があり、それが引き揚げられて輸入され、煙草のフィルターになったり、人工湖の底で小道具になったり、という話だった)

…続き

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