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その70 ― ピンチョン Lot 49
競売ナンバー49の叫び (ちくま文庫)

前回…] [目次


『急使の悲劇』あらすじの続き。
 Angelo flies into an apoplectic rage, and orders Niccolo's pursuit and destruction. But not by his own men.
 It is at about this point in the play, in fact, that things really get peculiar, and a gentle chill, an ambiguity, begins to creep in among the words. (p55)

《アンジェロは癲癇の発作を起こしたように怒り、ニコロを追って殺せと命じる。ただし彼の部下が手を下すのではない。
 じっさい、芝居のここからなのだ、何もかもほんとうに特異な色を帯びはじめ、そこはかとない冷気のようなもの、ある種の曖昧さが台詞の中に忍びこんでくるのは。》p85/p96

 ここしばらく、そしてこれからもしばらくは、小説の中で登場人物(エディパ、メツガー)が観た芝居の話である。

(1)『急使の悲劇』という劇が、
(2)小説の地の文であらすじにまとめられているのを読み、
(3)さらに短くまとめる

 このノートで書いているのが(3)であり、小説Lot 49 に書いてあるのが(2)である。では(1)はどこにあるか。それは(2)のなかに入っている――ことになっていて、じつは、どこにもない。
 エディパたちの観た実際の芝居は、あちこちをぶつ切りにされ、順序も大幅に組み換えられ、いくつかの台詞の引用部分でだけ原型をとどめているように見える、そんなまとめられたかたちで(2)になっている以外には、小説の中にほかのどんなかたちでも存在していない。どういう役に立つかはわからないにせよ、このことは忘れないようにしておきたい。

 さて、芝居のここから、《何もかもほんとうに特異な色を帯びはじめ》、《ある種の曖昧さが台詞の中に忍びこんでくる》という。
 公爵アンジェロは、郵便の急使ニコロ(正体はファッジオの王子)を殺したい。しかし《彼の部下が手を下すのではない》。ということはアンジェロは、部下ならぬ外部の何者かにニコロ殺害を委託する、ということになるわけだ。

・アンジェロの部下の郵便部門(ヴィットリオ)
・大手郵便「テュルーン、タクシス」(ニコロ、ドメニコ)

 このどちらでもない第3の組織が、これからアンジェロによって芝居のなかに、つまり小説Lot 49 の中に召喚されるはずである。
 それなのに、ここに続く部分はきわめて面倒な書かれ方になっており、それだからこそ、ゆっくり読んでいかなくてはならない。次回、思い切り長く引用する。

…続き
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