2004/04/02

その28 ― ピンチョン Lot 49

競売ナンバー49の叫び

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 映画は再びコマーシャルに入る。
 今度は煙草のCMで、フィルターに最高級の骨炭を使っているのが売りだという。またもやメツガーによれば、フィルターを作っている会社の株式は過半数がピアスの所有になっていたそうで、CMに入る企業のことごとくにこの大富豪の息がかかっていたらしいのがまた気になるが、これはまた伏線らしい伏線、いまは賭けの話だ。
“Right now it's your last chance to place your bet. Are they going to get out of it, or not?”
She felt drunk. It occurred to her, for no reason, that the plucky trio might not get out after all. She had no way to tell how long the movie had to run. She looked at her watch, but it had stopped. “This is absurd,” she said, “of course they'll get out.”
“How do you know?”
“All those movies had happy endings.”
“All?”
“Most.” (pp22-3)

《「いまは、きみが賭ける最後のチャンス。彼らは助かるか、助からないか?」
 エディパは酔いを感じた。ふと、なぜともなく、この勇敢なトリオは結局、助からないのかもしれないという気がした。あとどのくらいこの映画がつづくのか見当もつかない。腕時計を見たが、とまっていた。「そんなの、ばかげてるわ。もちろん助かるのよ」
「どうしてわかる?」
「こういう映画はみなハッピー・エンドだったわ」
「みな?」
「たいてい」》p38/p43

 そんなふうに「お約束」を意識しながらも、混乱したエディパは結局、「三人は助からない」ほうに賭ける。
 ところで、賭ける、賭ける、とさっきから言っていたが、では実際には何を賭けるのか? 二人は無言でたっぷり見つめ合い、それからエディパは言い切る、「何でもあなたの好きなものを」と。これだから大人は。

 CMが終って映画が再開すると、おかしなことが起きている。潜水艦に乗っていたはずの父親が、ひとりで陸上戦をたたかっているのだ。
“Now what the hell,” said Oedipa.
“Golly,” Metzger said, “they must have got the reels screwed up.” (p23)

《「これ、どうしたの」とエディパが言った。
「おどろいた」とメツガー――「フィルムの順番が狂っているんだ」》p40/p45

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