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2004/04/02

その27 ― ピンチョン Lot 49

The Crying of Lot 49 (Perennial Classics)

前回…] [目次


 酔っ払ったメツガーが再びピアスの話を蒸し返すと、やはり酔っ払ったエディパは「このインチキ弁護士」と罵倒する。メツガーは「弁護士は法廷で役者になるんだ」と語りだし、子役から弁護士に転身した自分の半生をドラマ化する計画があると自慢する。嘘ではないらしい。メツガー役を演じるのは本人ではなくて、彼の友達であるマニー・ディ・プレッソ(Manny Di Presso)という男。こっちはメツガーとは逆に弁護士から役者に転職したそうで、ドラマはすでにパイロット版もできているという。

 いかにも伏線っぽいそんな無駄話からテレビで進行中の映画に戻ると、3人(2人と1匹)の乗った潜水艦はいっそう激しい攻撃を受け、海中で窮地に陥っている。ここでメツガーは、今晩最大の変な提案をする。
“patrol boats, and machine guns. You want to bet on what'll happen?”
“Of course not,” said Oedipa, “the movie's made.” He only smiled back. “One of your endless repetitions.”
“But you still don't know,” Metzger said. “You haven't seen it.” (p22)

《「哨戒艇も機関銃も上にはある。どうなるか、賭けてみない?」
「いやなことよ。映画はもうできあがっているんだもの」彼は黙って微笑を返すばかり。「あなたの言う、無限に繰り返して上映できるってやつじゃないの」
「しかし、それでも、きみは知らないんだぜ」とメツガーが言う――「見たことがないんだから」》p37/p42

 メツガーは、映画がどのように展開するか賭けてみようと誘っている。この賭けじたいは珍しくない。珍しいのは、彼のほうはこの映画に出演しており、これから何が起きるか知っていることだ。エディパも言うように、ストーリーは「もうできあがっている」。最後のセリフをもういちど引用する。
“But you still don't know,” Metzger said. “You haven't seen it.”

《「しかし、それでも、きみは知らないんだぜ」とメツガーが言う――「見たことがないんだから」》

 なにが「しかし」なものか。メツガーは知っており、エディパは知らない。ここに不平等がある。「その25」でも「その26」でも、“知っているかどうか”が繰り返し強調されていた。だから、知っているメツガーの側から、知らないエディパに対して「当ててごらん」というのならともかく、両者のあいだに「賭け」は成立しない。するはずがない。そんな賭けに乗ったら、エディパが圧倒的に不利なのはわかりきっている。

 それなのに、彼女は乗ってしまうのである。

…続き

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