2010/10/13

その9 /10月13日(水)  下巻P159-250

逆光〈下〉 (トマス・ピンチョン全小説)

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《彼女は登山スーツ姿のままクルミ材でできたホテルのバーにもたれかかって、ペプフリ=スパッツォレッタの判読不能な紋章が刻まれたボヘミアングラスのずっしりしたタンブラーから年代物のスコッチウィスキーを飲み、にこやかに、しかし彼女独自の忍耐レベルで兄弟を見据えた。》下p189

■ 第三部後半から慌ただしく人物再登場が増える。ノートをあっちこっちめくり返し、それから上巻を拾い読みしたりしていると、脳内で快楽物質がジュワッと分泌される感。
 これぞ長篇小説の楽しみ、とか言ってるのでなかなか進まない(あと、キモい)。まだ下p250まで。

■ でも、べつに、細かくメモしていかないと読めない本ではないと思う(そんな小説はない、と考える)。
 むしろ人名さえメモせずに読んだときに、この小説の内部がどんなふうに見えるかに興味津々。だってそれは、メモしちゃってる私からはもう見ることのできない光景なので。(逆は可能)

■ 下p227からの第四部は、いよいよ「逆光」と題されている! そこまでの山盛りエピソードはぜんぜん消化できていないが、消化しないまま面白がっている(アルプス地下の未確認生物とか)。
 ちなみに第三部のタイトルは「分身」で、あ、分身!? と、いま改めてビビることしきり。

■ 下p180前後でばらまかれるエロ小話の類は、そのあとの父子エピソードを描くうえでの照れ隠しに見えた。なにせそっちも、霊媒まで介したややこしい構図になっている。
 ピンチョン、しょうもない下ネタだけでなく交霊会も好きだなあ(『重力の虹』の場合よりだいぶ明るいと思った)。
《「私たちは皆インチキという元素の中を飛ぶの」と彼女は言った。「そのおかげで私たちは空高く舞い上がれる。一度や二度インチキを使ったことがないっていう霊媒はいないわ」》下p190

 ・・・礎石が四次元立方体になってる〈怪物博物館〉なんてのもあった。もういくらでもあった。

《キットは再び眠りに落ち、敵の心臓に向かって飛ぶ弾丸を夢に見た。何年も、何マイルも旅をした弾丸が時々何かに当たり、角度を変えて跳躍し、まるで行くべき場所を知っているかのように飛び続けるのだ。》
 ここまでならとてもカッコいい。が、そのあと、
《四次元時空間におけるこのジグザグ運動は五次元におけるベクトルとして表現できるだろうと彼は思った。それが存在するのがn次元だとすれば、それを見、末端を結んで単一の合成ベクトルを作るには一次元上のn+1次元が必要だ。》下p197
と続く。「彼」ことキット君は、元イエールのベクトル主義者。

■ 下p243うしろから3行めにたいへんなことが書かれている気が一瞬した。でも、これほどの長さがある小説をひっくり返すカナメの一文、なんてものはないことも知っている。
 まとまってもまとまらなくても、ぜんぶ読んでこその小説。よくわからないことを書いている。

…続き

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