趣味は引用
読めるだけ読むM&D その14
Mason & Dixon

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 このブログにログインするパスワードを2度まちがえた。気がつけば前回の更新から2ヶ月近くが過ぎている。

(A) それでもいい。「翻訳出ないかなあ」からじっさいに出るまで10年。それに較べれば2ヶ月なんて何ほどのことがあろうか。自分のペースで読むんである。さあ読もう。

(B) 「読み終えたー」、という声さえ最近は聞かなくなってきた。読む人はたいていゴールした、ということか。いっそ9月に『逆光』が出て、みんなそちらに移行してからひっそり読んでいこうか。もうしばらく待とう。

 ふたつの気持のあいだで引き裂かれるようなことは特になく、サボっていただけでした。本って、読まないあいだもそのままでいて、また開けばそこから始まるというのが素晴らしい。なので再開。だらだらと行く。


■ 第26章(pp257-65)

 第2部 America、最初のページをめくると、メイスンとディクスン、ふたりを乗せた船が新大陸に到着するところなのでおどろいた。「ようやく」アメリカなんだが、「いきなり」アメリカでもある。ときに1763年11月15日(火)。
 航海中のドタバタがながなが語られると思っていたのに、そこは大胆に省略されている。船はヘンローペン岬を通過してデラウェア湾に入り、そこからフィラデルフィアにいたる。岬を過ぎるあたりでは夕闇を越えて正体不明の獣の鳴き声が聞こえていたのに、フィラデルフィアはずいぶんちがう。
 はんぶん忘れかけていたけれど、このMason & Dixon という長篇小説は、チェリーコークという牧師が甥っ子をはじめとする親戚たちに、20年ばかり前に行われたメイスンとディクスンの測量大冒険をえんえん物語る――という枠組みをもっていた→「その3」
 そこで「いいかね子供たち、ここは当時、英語の話されるなかではロンドンに次ぐ大都市だったんじゃよ」と語られる通り、フィラデルフィアは、世界各地の品物が集まり、さまざまな人種がにぎやかに行き交う国際都市として描かれるている。ピンチョンのごちゃごちゃした文章は、ごちゃごちゃした街を書くのにちょうどいい。そんな単純なことかどうかわからないが、私にはそう見える。
 で、携帯に便利なコップと奴隷の女が並んで売られるようないろんなごちゃごちゃのなかでも、とくに宗教がごちゃごちゃしているということがこの章で念入りに示されているのは、小説のこれから先をおそらく予告しているのだと思う。
 それで一応、当時のフィラデルフィア(ペンシルヴェニア植民地)がどんなところだったのか、ちょっとは調べておく気になったのだけれども、メイフラワー号到着(1620年)以降の東海岸の宗教勢力図、なんかのような細かいことを調べるには、手元にあったアメリカ文学史の類ではぜんぜん足りない。かといってネットで調べ始めたらまた2ヶ月ぐらいすぐに経ってしまいそうである。痛しかゆし。
 とりあえず、本国で迫害されていたクウェーカー教徒、ウィリアム・ペンの設立(1681年)になるペンシルヴェニアでは、信仰の自由が大事にされていたらしい――って、そんなことはべつに調べなくても、この章の街角には福音派の人間も国教会も長老派も歩いているんだからわかることだった。そういえばディクスンもクウェーカーだったはず。

 ところで今回、思いついてGoogleマップの地図を作ってみた。が、これだけではまったくもってたいした意味はありません。


より大きな地図で M&D を表示

 こういう作業は早々に面倒になるに決まっており、今後の小説の進み行きに沿って地図も更新される、なんてことは絶対にないと言い切れる(だいたいこれは、それこそM&Dのふたりが州の境を画定した現代の地図である)。
 そのようなガイドは、すでに翻訳で読了されたかたがたに期待したいところ。しかしそういうかたがたは、そろそろ『逆光』のためのアップを始めているころでしょうか。私はたぶん、年内はこれを読んでます。
…続き
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