趣味は引用
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
読めるだけ読むM&D その12
Mason & Dixon

前回…] [目次

 肌に粘りつく湿気のせいなのか何なのか、なんだか今週は苦戦した。部屋では眠ってばかりいた。なので20ページしか進んでいない。

■ 第21章(pp207-14)

 まだメイスンの故郷の話みたい。
 それでまたレベッカとのことが描かれて、むかしふたりで月明かりに照らされるストーンヘンジを見に行ったときのこととか読むと簡単にほろりとさせられてしまうんだけれども、もしかするとこういうところが、「新潮」2010年5月号のピンチョン特集で紹介されていた、「ピンチョンの描く女性像や性描写には、十四歳の子供が抱く深さやニュアンスしかない」という評にあたるのかもしれない。

 でもまあ、種々雑多な小話を次から次に繰り出して、あっちこっちのエピソードを謎の配線でつないでいく(わかるようでわからない/わからないようでわかる気もする)ピンチョン小説を駆動するのが意外と単純なエモーションであることは、『V.』のむかしから一貫していたと思う。
 あの長篇に出てくる"Keep cool, but care."(クールであれ、でも思いやりも忘れずにね)って言葉は、皮肉ではなく字義通りに発されていると思うし、『競売ナンバー49の叫び』の後半、もうこの世にいない大富豪がヒロインに向けた思いも、「いい気なもんだ」ではあるせよ、そういうものとして純粋な感情だった。
 レベッカの生前は愛妻家だったのかと言えば、それはそれとして、星のことばかり考えていたメイスン。いま、自分の子供を見ても亡妻の面影を探してしまうこの男の、ひたすらうしろ向きな姿の描かれかただって、ぜんぜん悪くないと私は思った。ただ、読みにくいだけである。あと、はやくアメリカに行ってほしい。
(しかしこのあたり、もうアメリカには「行くことになってる」ように読める部分がいくつかあって気になった)


■ 第22章(pp215-27)

 そろそろだろうと思っていたが、久しぶりにディクスンが出てきた。こっちはこっちで、故郷の町ダーラムに帰っている模様。
 が、この章に苦戦した。読もうとしても5行で力尽きるような夜が続いた。なんでこんなに読みにくいんだろうと首をひねりつつ、それでいて、翌日もういちど見てみると、前夜さっぱり歯の立たなかったところが一応は内容を推し測れるくらいにはなっていたりする。かと思えば次の3行であたまのなかが濁り、気がつくと眠っている。なんなんだ。
 どっちにしろたいしたものではないにしても、この“読める程度のブレ具合”が、ろくに読めない英語の本をのろのろと追っていく醍醐味なんである――とでも考えないとやっていけない。この過程が面白いと、私は思っている。いまそう決めた。
 ここでディクスンは、昔からの知り合いや、もと先生らしき人と会ったりするんだが、旧交を温め合うというよりは、いろいろ激論に巻き込まれるかっこうだ。「いろいろ」。私に読めるのはそのくらいである。
 でも、いちばんウソくさい描かれかたをしている人間(霊能力者であるとか、夜、空を飛んでるのを目撃されたとか、メスマーの先駆けみたいなやつであるとか、好き放題に書いてある)こそが実在の人物この人だったりして、ピンチョン、たぶんすごく楽しんで書いているんじゃないかと思われた。
 考えてみればディクスンもメイスンも実在した人間であるわけで、このような“歴史小説”って、これまでほとんど読んだことがなかった(ちなみに「龍馬伝」も見ていない)。アメリカに渡ると、もっともっと実在の有名人が出て来て純然たるフィクションの人間と入り混じるらしい。それも楽しみにしておこう。

 そのアメリカについて、この章では「イギリスでごたごたが落ち着いたら、戦いの場はアメリカに移るだろう、あんな場所にもそれくらいの使い途はある」みたいな言われかたをしているくらいだから、清教徒革命からこっちのイギリスの政治だとか、イエズス会の中国進出がどうしたとかいう話が、うねる文脈のなかにぎゅうぎゅう押し込まれているようだったが、はじめて知ったのは"Ley-Lines"なるお話だった。
 これはなんでも、数かずの古代の遺跡をつないでいるという仮想上の直線のことだそうで、ローマ人はこの線に乗せて自分らの力を伝播していきたかったんだろう、みたいなことがたしか書いてあった。
 ディクスンもメイスンと一緒に、もうあと少しで仮想の線を新大陸に引っぱりに行くことになるはずだ。やはりこちらの章でも、もうアメリカには「行くことになっている」ように読める部分もあったりしたのが、私の願望のなせる早とちりではないことをねがっている。
 ところで、この章でディクスンに向けられた質問と答えがこれ。
《「君の生きる目的は何かね」
 「測量、です」》p220

…続き
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。