趣味は引用
読めるだけ読むM&D その11
Mason & Dixon

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 新潮社の邦訳『メイスン&ディクスン』は6月30日に発売なんだけど、同じ日に刊行の福永信『星座から見た地球』も楽しみ。こっちのほうをたぶん先に読むと思う。ここの後半で書いた、“ABCDシリーズ”をまとめたものになるみたいでわくわくしている。
 それで新潮社サイトに行ってみると、もう書影も出ていた!・・・てことは、そう、ピンチョンのほうも上巻下巻とお目見えしていたのだった。


■ 第18章(pp183-9)

 で、私のメイスンとディクスンは、ようやくイギリスに帰ってきたところだった。長かった。ここまでが長かった。でもすぐに「新大陸に線を引け!」とはならず、メイスンは姉妹の住んでるところへ会いに行く。そこには亡妻レベッカとのあいだに生まれた子供もいるみたい。かつてレベッカは、天文学者のメイスンは星々の世界のほうへ行ってしまったとさみしく笑っていた。いまメイスンは、夜空の星座に妻をさがしている。
 このしんみりした話とはあまり関係ないが、ドラえもんでのび太に「冒険好きのおじさん」がたしかおり、たまに帰ってくるとまとめてお年玉をくれる、というのに子供のころ胸を熱くしていたんだけど、あれがおじさんでなく父親だったらちょっとつらいかもと思った。あと、メイスンは別に好きで冒険しているわけではない。本当に関係なかった。


■ 第19章(pp190-8)

 まだメイスンの地元。1752年、ユリウス暦からグレゴリオ暦に改暦されたときのことが回想される。
 この改暦については、以下の記事がわかりやすかった。フランス革命には関係がなく、池田理代子先生には申し訳ないことだった。
 →「ベルばらKidsぷらざ」:グレゴリオ暦とフランス革命暦 1752年
1752年に改暦が法制化されたイギリスでは、労働者たちの暴動が起こった。なぜなら「9月3日水曜日の翌日を9月14日木曜日とする」と発表されたため、11日間が消滅してしまい、この消えた11日分の賃金を支払わない雇い主が出たりして、タダ働きさせられた労働者が怒ったのだ。

 この「消えた11日」の話を扱った本を、ずっとまえに読んだ記憶がある。歴史小説かと思ったら、暦のしくみを子供に教えるレクチャー本で、ぜんぜん盛り上がりがなく、すぐ売ってしまった。
 たしか、『○○○○と消えた11日間』みたいなタイトルだったと思うんだけど(○○○○は子供の名前)、いまあちこち検索しても見つからない。この本じたいが消えてしまったみたいで不思議な気分だ。

 酒場に集まる男たちは単純に「寿命が11日、短くされちまった!」みたいな感じで怒っており、この改暦を行った天文学者を「みんなの時間を盗んだ」と非難している。
 自分も天文学者であるメイスンは、ちょっとだけ説明責任を感じるけどすぐにあきらめ、逆に“はるかな東から奇怪な音楽を吹き鳴らしてイギリスまでやって来て、失われた11日間の中に棲みつくピグミーの一団”などという与太話を開陳、一座を震え上がらせる。なにしてんだ。


■ 第20章(pp199-206)

 メイスンが姉夫婦の家を訪ねる。妹夫婦だったかもしれない。どっちにしろあんまり乗り気ではない模様。まだ小さい男の子を2人預けているんだけど、片方はメイスンを父だとおぼえてもいなかったり。
 メイスンは「今度はアメリカに行くかも」と伝え(!)、子供のことでいろいろあって、自分の父に面会しに行くことになる。
 これにはさらに乗り気ではない模様、というのは、どうもパン職人であるらしい父とメイスンの仲はよろしくなくて、過去、パン生地をこねていた時分のメイスンの姿なんかが語られる(あと、いま現在のメイスンが34歳であることもメモしておこう)。
 メイスン父にもひと癖あって、なにしろ「パンは生きている」が信条だった。メイスンの子供-メイスン、メイスン-メイスン父、という2組の父子関係があり、そこにパンの話がくるんだから、きっとおそらくこの章はキリスト教に触れているんだが(というか、そう書いてある)、とりあえず若いころのメイスンは、「パンの中にキリスト様が入ってるっていうんなら、ほかのうれしくない悪霊なんかも入っちゃってるんじゃないのかなあ」などと考えていた。

 父親が頑固な職人。かつ、スピリチュアル。勘弁してもらいたい。そんなことよりこの章、特筆すべきは“読みやすかった”ということで、これから先もこんなふうならいいのだけど、たぶんそういうことは、ない。
 ところで、「スピリチュアルおやじ」と書くとまるでしりあがり寿の作品のようで、実在しないのが不思議なくらいである。そしてディクスンは今ごろどうしているのか。

…続き
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