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読めるだけ読むM&D その9
Mason & Dixon

前回…] [目次

 いよいよ公式チラシもできて、新潮社の“トマス・ピンチョン全小説”が迫ってきた感がある。そのチラシにいわく、『メイスン&ディクスン』とは――
新大陸に線を引け! ときは独立戦争直前、ふたりの天文学者の測量珍道中が始まる――のちに合衆国南部と北部を分けることになる、歴史的な境界線を定める旅の果てとは。
 柴田元幸氏渾身の訳業により、かつてないピンチョンが姿を現す。

 むちゃくちゃ面白そうじゃん、これは楽しみだ! と、なぜか屈折した期待をかき立てられているのだが(私はいまそれを読んでるんじゃないのか)、6月末までには私のメイスンとディクスンも、せめて新大陸にたどり着いて測量を始めるくらいにはなっているのだろうか。
 なお、“全小説”のチラシ実物は、新潮社に電話するのがいちばん手っ取り早い入手法だと思われます。


■ 第14章(pp146-57)

 まだまだセントヘレナ島、かと思ったら、この章はケープタウンに戻ったディクスンの話だった。
 ディクスン、こないだまで世話になっていたオランダ人のおっさんに、なんだかいかがわしい店へと連れて行かれる。いかがわしいので詳述はしないが、というか詳述できるほどちゃんと読めなかったのだが、そこで紹介された言葉から注釈サイト → グーグル様、とたどっていって、さっきまで聞いたこともなかった「カルカッタのブラックホール」なるものを、いまの私は知るようになった。
 はじめは、カルカッタに宇宙と関連するような事件が何か起きたのか、ありうる話としては隕石でも落ちたんだろうか、でも隕石とブラックホールはちがうと思う・・・ などと考えていたのだが、出てきたのは予想とはぜんぜん別なことだった。下のサイトに詳しい。

 カルカッタの「黒い穴」事件
 http://www.nazoo.org/marderer/blackhole.htm

 リンク先の記述はたいへん興味深いのだけど(とくに最後!)、いま、小説の舞台が1761年のアフリカであることから考えると事件の発生した年はたぶんちがっていて、作中では(あとWikipediaでも、1756年とある。

「歴史ってすげえ」と、ひどく雑な(でもほかに言いようのない)おどろきかたをした私だが、自分が知らなかっただけでじつは有名、というのはたいへんよくある事態だから、せんじつ顔を合わせた人間3人に「カルカッタの黒い穴って知ってる?」と尋ねたところ、やはり1人はご存じだった。でもなんで知ってるの。
むかし『ムー』で読みました

 あなどりがたし、ムー。


■ 第15章(pp158-66)

 さて、上の行まで書いたところで、ついつい1週間ほど読むのをサボってしまった。
 あらためてページを開いてみると、目が英語を受けつけない。ちょっと単語を調べたくらいでは、文字面が私の視線をはね返す。いっこうに内容がわからない。こんなに読めなかったっけ。
 なのでさらに1週間サボり、ああ、このへんで挫折か(意外と早かったな)と嘆息したのだが、「読めない部分は読み飛ばす」の精神を思い出して再度取り組んだ。いや、飛ばした。
 それにしても、読むのが難しいところを読み飛ばすのもまた難しい。もうちょっとがんばれば、少しは内容が見えてくるかもしれない → それでも読み飛ばす、のは惜しい気がしてしまうし、だからといって読めないし、どこまで読み飛ばせば再びとっつきやすい部分が出てくるのか保証もない。それに、と愚痴はいくらでも出てくるのだがまあいいや、この15章はまたセントヘレナ島で、私じゃなくてネヴィル・マスケリンのとめどない愚痴をメイスンが聞かされる話だった。
 で、たぶん、おそらくまた、植民地支配の悪と病、みたいに抽象的なことが島の風物の具体的な描写に重ねてぐいぐい語られていて、どうやらこのテーマになると私はてきめんについていけなくなるようだ。これがこの小説の背骨なのかもしれないが、読めないものは仕方ない。
 しかし「お」と思ったのは、そういうむつかしい話だけでは終わらずに、最後の部分で人間メイスンにすーっとピントが合わされるところ。

 じつはメイスンは2年ほど前に妻を亡くしており、以来ずっと、鬱々した気持を引きずっていた。
(その気持の反動が、ロンドンの首吊り処刑を欠かさず見に行くというかたちで発現していたんだから人間心理ってやつは複雑である)
 セントヘレナ島には強風が吹きつける。そしてメイスンはある時、この風の中に亡妻レベッカの声をはっきり聞くのだった。
 なにしろ科学者という理性の時代の申し子であるメイスンは、死後の世界のある/なしにこれまでも思い悩んできた(理性に基づいて考えた結果、「あるんじゃないか」となるのが面白い)。
 ケープタウンから島に戻ってきたディクスンにメイスンが悩みをぶつけるラストのやりとりは、ぜひ翻訳で読み直したい要チェック箇所である。なんとなれば、不器用な田舎者として書かれることの多かったディクスンが、苦しむメイスンにかけた言葉は素朴なぶんだけやさしくて、私はちょっとおどろき、もうしばらくこの2人組に付き合ってみようという気にさせられてしまったからだった。
"Thou must," Dixon does not say. Instead, tilting his wine-glass at Mason as if 'twere a leaden Ale-Can, he beams sympathetickally. "Then tha must break thy Silence, and tell me somewhat of her." (p166)

…続き
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