2010/05/17

読めるだけ読むM&D その8

Mason & Dixon

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 ちょっとまえに最初の100ページは越えた。ぜんぶで773ページあるから6月末までにはやっぱり読み終わらないだろうけど、それでもいくらか気持が明るくなったのは、10年以上前のこの座談会が記憶にあったから。

ぼくらは30年間こんな風に小説を読んできた:柴田元幸/宮脇孝雄/若島正 (1997/08/22)

 すごいメンツ。冒頭にこんなやりとりがある。
柴田 今読んでいるのはピンチョンの新作なんですけれど、まだあと500ページくらい残っているんですよね。若島さんはもう読まれましたか?
若島 いいえ。うちの大学にピンチョンを読んでいる学生がいるんですけど、彼が一足さきに読んでいて、結果報告をしてくれました。彼が言うには、最初の100ページを読むのはしんどいけれど、それを超えるとなかなかノレますよ、と。

 ここでいう「新作」がMason & Dixon である。やっぱりしんどかったのか! でも、この先がほんとうに読みやすくなっているとしても、私なんかでは「すごくすごくしんどい」が「すごくしんどい」になるくらいじゃないだろうか。
(若島正の近くにいた「ピンチョンを読んでいる学生」というのは、のちにピンチョン論で単著を出す人じゃないかと思ったけど、根拠レスな想像です)


■ 第12章(pp116-24)

 セントヘレナ島。
 メイスンとディクスンがケープタウンまで行かされたのと同様に、この島にも別の英国人天文学者、ネヴィル・マスケリンが派遣されていた。
 この章のほとんどは、そのマスケリンとメイスン、ディクスンの3人が酒場でくだを巻く話なんだが、マスケリンとメイスンには何か因縁があったのか(読み取れず)、険悪な感じである。酒は飲むんだけど。

 これまでもそうなんだけど、長い会話文が連続すると、わからない部分がいっそう多くなる。とくにここでは、嫌味や当てこすりが頻発されているみたい、ということは薄々つかめても、その具体的な内容はさっぱりだ。
 あと、メイスンたちがケープタウンで使っていた時計と、セントヘレナの時計を交換する話があって、人間が目を離した隙に、「そっちはどんな具合だい」とふたつの時計が会話を交わすという、自由すぎるシーンがあった……気がする。
 もう、ここに私が書いていることは、ぜんぶ「たぶん」「おそらく」「気がする」「かもしれない」である。

 ところで、なんだかいけすかないやつとして書かれているマスケリンは名門の一族のようで、辞書(リーダーズ+プラス電子版)にも、このネヴィル・マスケリン(1732-1811)のほか、ふたりのマスケリンの名前があがっていた。
 まず、彼の孫にあたるマスケリンは鉱物学者(1823-1911)で、(異説もあるみたいだが)さらなる子孫には、ジョン・ネヴィル・マスケリンという奇術師がいた(1839-1917)。《時計職人であったが、自動機械装置に興味を持ち、奇術の道に入った。》という辞書の記述は、なんだかスティーヴン・ミルハウザーの小説に出てくる登場人物を現実がなぞっているみたいである。
 しかも、この奇術師マスケリンの項目には続きがあった。
《彼の孫Jasper(1903-73)も奇術師で、第2次大戦中はその特異な知識を用いて敵を撹乱した》

 これ、楽しんで書いてないか? 辞書だからといって油断のできないことである。「特異な知識」があまりに気になり、ググってはリンクをたどっていくうちに今日もまた夜は白々と明けてゆき、小説はいっこうに進まない。この状況のぜんたいが、私を相手に仕掛けられたイリュージョンのようである。いやだろう、それは。
 それにしても、ここにある顔写真の胡散臭さはいったい何なんでしょう。


■ 第13章(pp125-45)

 ディクスンは何らかの事情で(器具の調整?)ケープタウンへしばらく戻ることになり、メイスンは気の合わないマスケリンとふたりでセントヘレナに残されている。
 そのマスケリン、徐々にメイスンに近づいてくる。この島に愛憎入り交じるたいへんな思い入れがあるらしく、次第にメイスンは「ああ、やばい人なんだ」と判断、距離をおこうとする。
 本来の目的だった金星日面通過の当日も、この島は曇りだったせいで観測できないなど、マスケリンは不運続きで、なんだかかわいそうな男である。天文学者であることの悩みや不安などが熱っぽく、でもぐちぐちと語られるので、メイスンのほうでも共感する部分があったりなかったり、なぜか占星術でもってメイスンとディクスンが分析されたり、とにかくこの章は読みにくかった。
 
 100ページを越えてから、むしろ停滞している。原因であるネヴィル・マスケリン(天文学者・29歳)、きみのことは忘れない。
 でも次の章もまだセントヘレナなんだろうな……

…続き

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