趣味は引用
読めるだけ読むM&D その3
Mason & Dixon

前回…] [目次

■ 第1章(pp5-11)
Snow-Balls have flown their Arcs, starr'd the Sides of Outbuildings, as of Cousins, carried Hats away into the brisk Wind off Delaware,-- the Sleds are brought in and their Runners carefully dried and greased, shoes deposited in the back Hall, a stocking'd-foot Descent made upon the great Kitchen, in a purposeful Dither since Morning, punctuated by the ringing Lids of various Boilers and Stewing-Pots, fragrant with Pie-Spices, peel'd Fruits, Suet, heated Sugar,-- (p5)

 前回、訳文を引用した冒頭部分の原文がこれ。ぱっと見で「ちょっと、変」と思うのは、妙に大文字が多いというところ。これはMason & Dixon が、18世紀の冒険小説を装って、擬古文で書かれているためらしい。当時の英語では、名詞の頭文字は大文字にされたとか。ドイツ語みたいだ(って、詳しいことは知らない)。読みにくいことこのうえない、と最初は辟易するが、それがどこまで大文字化のせいなのかは定かではない。というか関係ないと思う。

 時は1786年のクリスマス、場所はアメリカのフィラデルフィア。若いころからあちこち放浪してきたウィックス・チェリーコーク(Wicks Cherrycoke)おじさんが妹夫妻の家にやって来て、しばらく前から滞在している。泊めてもらうかわりに彼は、一家の子供たちに、自分の見聞きした面白話を物語る――
 これがMason & Dixon の、もっとも外側の枠らしい。
 おもては寒風吹きすさぶ真冬の銀世界だけれども、暖炉であたためられた家の中はたいへん居心地がよさそうだ。独立戦争からこっち、国は疲弊しているが、ここではテーブルはじめもろもろの家具調度品は磨き上げられて、食べ物も豊富にあるし、話を聞いてる双子の男の子(PittとPliny)は、おじさんが「犯罪の…」と言えば「はんざい!」と、「ロンドン塔に…」と言えば「ロンドンとう!」と声をそろえて力いっぱい反応するのがなんともかわいらしい。それをしっかり者の姉がたしなめる。

 なんだか、とても楽しそうな状況なのである。私も双子の男の子の隣に並んだつもりでこれからお話を聞いていくんだね……って、これでさえ書きすぎだ。私はあらすじなんかまとめないつもりでこの読書日記を書いていくんだった。ましてや、外の風景描写、「木々は、そのいちばん細い枝まで凍りついてキラキラ輝いていた」なんて部分がたまらんなあ、なんて細かいことまで触れていたらちっとも進まない。
 もとい、ウィックスおじさんがここにやって来たのは、古い仲間だったメイスン(Mason)の葬式に出席するためだった。いまでも毎日、お墓参りは欠かさない。おじさんは20年ばかり前、そのメイスンたちと一緒に「勇敢で、科学的で、しかもそのあとの戦争で無に帰してしまった大仕事」をしたという。
"we were putting a line straight through the heart of Wilderness, eight yards wide and due west, in order to separate two Proprietorships" (p8)

 名詞大文字化のルールがよくわからないので、もう気にしないことにする。
 ところで、「新潮」2010年5月号掲載のピンチョン鼎談で、柴田元幸はこんなことを言っていた。
柴田 […] 密度が濃い小説だから読むのに時間がかかるかなと思う反面、訳者としては『メイスン&ディクスン』は一気呵成に読んでほしいという願望がある。》p256

 それは、無理です!
…続き
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