2010/04/15

のろまな子: 読めるだけ読むM&D その1


目次

 もう遅い。どうせ間に合わない。それはわかっているのである。

 トマス・ピンチョンの長篇小説Mason & Dixon (1997)は、あと2ヶ月半後の6月末に、柴田元幸による翻訳が新潮社から刊行される。
 “トマス・ピンチョン全小説”という企画の第1弾で、文芸誌「新潮」の2010年5月号にはピンチョン特集まで組まれているから、これはもうまちがいない。タイトルは「メイソン&ディクソン」ではなく、『メイスン&ディクスン』で決まりのようだ。

 この翻訳には相当な時間がかかっていて、たとえばこのブログでも、5年前にこんなことをメモっていた。2005年当時、「あと3年待つのかあ」と思った私は、「いや、もっと遅れるだろう」と予想、Mason & Dixon の原書を買ったのだった。3年、さらにプラスアルファの猶予があれば、もしかすると自分でも読めるんじゃないか。読めないにしても、全ページに目を通すくらいは。そんなふうに考えた。
 そして実際に「あと3年」より「もっと遅れ」たわけだが、いぜん私はMason & Dixon を読んでいない。何度か挑戦して、ぜんぶで773ページあるうちの、70ページくらいまではめくったんだけど、その程度で挫折している。10分の1以下である。
 この小説は、18世紀の後半、英国王立協会から派遣されたふたりのイギリス人(メイスン&ディクスン)が、独立前のアメリカで、のちに北部・南部を分ける境界線となる州の境を測定しようと奮闘する、波瀾万丈・抱腹絶倒の大陸横断歴史冒険物語だと紹介されているはずだが、たしか私の読めた範囲では、ふたりはまだアメリカに渡っていなかった。『罪と罰』で言えば、ラスコーリニコフが下見をしているあたりじゃないだろうか。

 訳書が出たら、この原書ハードカバーを読むことは、これから先、きっとないだろう。それはなんだかもったいない気がする。すごくする。なにしろ5年のあいだ、私の部屋に鎮座ましましていたのだから。
(参考までに画像を貼ろう。650ページ近くあってけっこう大きい『ヴァインランド』と較べても、このデカさと、この厚さである。日本ではなかなかお目にかかれない立派な体格だと思う)
 しかし、まず、私はろくに英語が読めないし、しかも相手はピンチョンだし、そのうえ(中略)……と、「6月末に刊行」との告知があった2月からウジウジ悩んでいたのだが、次第に、べつにぜんぶ読めなくてもいいじゃないか、と思うようになった。だって、読めないものは読めないんだもの。

 ・ぜったい読み終わらないが、気にしない。
 ・むしろ、読み終えようなんて思わない。
 ・翻訳が出たらそこから翻訳に切り替える。それでいいじゃないか。

 と、こういうことにして、ようやく、読書日記のようなものをはじめる気になった。ふと、2月からやっていれば期間は倍あったことになったのか、との思いがよぎったが、まあそれも気にしない。
 目標としては、あと2ヶ月半で全体のはんぶん、390ページを越えられれば充分だと考える。いや、それだって無理のある高望みだ。200ページでもいい。100ページ行かなかったとしても、それはそれである。だらだらと行く。
 そんなわけで、この日記のタイトルは、「読めるだけ読むM&D」ということにする。

…続き


Mason & DixonMason & Dixon
(1997/04/30)
Thomas Pynchon

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