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読中日記 (4)


 人から借り受けたノートパソコンで更新。


■ 8月17日(月)

 古本屋でなんとなく買った高島俊男『漢字と日本人』(文春新書)をめくってみたら面白く、読んでいるうちに寝る時間になる。

■ 8月18日(火)

『漢字と日本人』を読み終える。もともと中国のことばを書き記すために作られた漢字を、自分たちのことばの表記に無理やり流用したむかしの日本人。そのせいで日本語はどこがどう変なものとしてできあがっていったのか。
 複数の音読みをもつ漢字があるのはなぜなのかさえ、あらためて考えてみると事情を知らなかった(というか、それが奇妙だと思ったこともなかった)私にはとても面白かった。当たりまえだと思っていたことにも起源と理由があることを説明してくれるので、著者がたいへんえらそうに喋るところにかえって好感をもった。


■ 8月19日(水)

・ブログ「東京永久観光」で、スタンダールの『赤と黒』(1830)を山川の世界史教科書とあわせて読んでいるという記事(→これ)を見て「おお」と思う。

・というのは、私も先月、スタンダールではないけどフローべールの『感情教育』(1869)を、やっぱり高校生向けの世界史参考書をめくりながら読んでいたからだった。
『感情教育』は、田舎生まれの青年フレデリック・モローが七月革命後のパリにやってきて、ひと目ぼれした人妻に近づこうとあれこれもがく話だった。目標はそのひとつながら、パリの街にはさまざまな階級の老若男女が群れ集い、それぞれ好き勝手に彼を翻弄する。純真だったフレデリックは、むしろだめな男になっていくように見えなくもない。それも教育。
 何年にもわたって思いを焦がし、ついに勝負の一手に出たフレデリックを嘲笑うかのように勃発する二月革命、なんて展開をみせるこのような小説を読んでいると、なんだか「とてもかなわない」気がする。世界史と並んで歩く世界文学、なんていうのはいつごろまで「あり」だったのかというのは、小説よりも受け手の側の問題だろうか。
 自分で書いていることがよくわからないが、『感情教育』が面白かったのはまちがいない。私は岩波文庫(生島遼一訳)の上下巻で読んだけれども、9月に別の訳が河出文庫に入るらしい(→これ)。また読むかも。

・ところでこの『感情教育』、上巻の終わり近くにこんな記述があって、
《世の中には他人の間にあってただ仲介の役目だけをする人間もいるのだ。橋を渡るようにふみ越えると、人はさっさと行ってしまう。》p391

 ここから思い出すのは村上春樹『風の歌を聴け』(1979)の冒頭2ページめ、
《様々な人間がやってきて僕に語りかけ、まるで橋をわたるように音を立てて僕の上を通り過ぎ、そして二度と戻ってはこなかった。僕はその間じっと口を閉ざし、何も語らなかった。》

 という部分で、たしかに作中には「僕」が『感情教育』を読んでいる場面があったのだった。だから何、といわれても困る。

・それとあと、長嶋有の『ねたあとに』(2009)では、小説家コモローがオーエ賞のオーエさんから「宿題」として英訳版のSentimental Education を読むようにいわれて苦労していたのだった。
 読み終えたのだろうか、と気になってしまうほどあの小説にはこちらとの地続き感がある。日常はどこから歴史になって世界史になるのか。

・『ねたあとに』読者にはたまらない、2009年のムシバム(虫が出ます)。


■ 8月21日(金)

・カレーを大量に作ったが、口内炎ができかけていてあまり食べられない。

・そういえば先月は、『感情教育』に続けて、おなじフローベールの『サランボオ』(1862)も読んだのだった。
 こちらは意外にも紀元前3世紀のカルタゴを舞台とする変な小説で、読んだのは古い角川文庫の復刻版(部孝訳、上下巻)。よって、カルタゴの神官や元老院はもとより、奴隷や都市から追い出される蛮族の傭兵たちまで旧字旧仮名で議論するという、なんだかすごいことになっていた。

・その流れでさらに朝比奈弘治『フローベール『サラムボー』を読む』(1997)も読んでこちらも面白かったが、いまはジュリアン・バーンズ『フロベールの鸚鵡』(1984)を読み返してみたい。なにしろ、まえに読んだときには『ボヴァリー夫人』さえ読んでいなかった。

・そして『ヴァインランド』は、この数日手に取っていない。


■ 8月22日(土)

・口内炎が悪化。プリンとヨーグルトで生きる。





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