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筒井康隆「点景論」(1983)
『筒井康隆全集 24』所収、新潮社(1985)

 筒井康隆の小説はあらかた読んだつもりでいても、全集にあたればいろいろ初見のものに出くわすのだった。
 ほんの13ページの「点景論」は、内容からいって「中隊長」に始まりのちに短篇集『エロチック街道』としてまとめられた一連の実験作に繋がるもので、じっさいそれらと同じく中央公論社の文芸誌「海」に発表されたものなのだが、掲載が『エロチック街道』の刊行以後だったので洩れてしまい、いささか毛色が違うために他の単行本にも収められなかったのではないか――と巻末の年譜を見ながら推測する。筒井読者の誰もが知る、あの「おれ」の動き回る様子が、妙に手法に自覚的な文体で描かれる。楽しい。内容というのは手法のことだから、冒頭からしばらく引用して紹介に代えたい。

《あっ。なんということだ。「尾行者」はおれに対する尾行者であった。それに気づいたのはその日彼を四度見かけたからだ。二度なら偶然といえる。三度でもあり得なくはない。「尾行される者」の行動範囲がおれのそれと重なっているのかもしれないからである。しかし四度というのは偶然とはいえない。なぜならここは都市だからだ。イエイ。都市というのはそこに人間がいてこそ都市であり、それゆえに都市内の人間は都市を構成するさまざまな要素を役割として持っていなければならない。たとえそれが都市居住者ではなく田舎者であってもだ。おのぼりさんのひとりもいない都市などというものがあり得ようか。「尾行者」とてひとつの要素である。もしそれが他人に対する「尾行者」であればおれという別人の前へ四度も気になる状態で姿をあらわしたりしてはならぬ筈だ。》
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