2009/05/01

2009年04月29日(水)


 こういう雑誌が、よく行くブログの複数で取りあげられているのをみて、私もほしくなった。

 「WALK」58号 日記 あるいは偏執狂的日記特集

 公式な情報はこちら
 水戸芸術館というところが出していて、近くの本屋では置いていないから、新宿の紀伊國屋本店まで行ってきた(通販もしています)。
 雑誌売り場を端から端までさがしてみたが見つからず、「もしや」と上階の美術書フロアもさがしたが見つからない。すると店員さんが通りかかったので訊いてみると、そんなの聞いたことがないという顔で「うちでは取り扱ってないです」と言われる。悲しい気持で道路をわたり三越のジュンク堂新宿店へ。あった。8F雑誌売り場の文芸誌コーナーで、ふつうの文芸誌と一緒に置いてあった。ただ、私の取ったのがそこに並んでいる最後の1冊で、在庫があるのかは不明。次にさがしに来た人が悲しい気持にならないか心配だが、しかし私もほしかったんだ。

 で、部屋に帰って読んでみる。日記の特集なんだけど、日記についてどうこういう話ではなく、すべての執筆者が日記を書いている。だからどこを開いても、全ページが日記。むちゃくちゃなボリューム。まえがきや編集後記にいたるまで「編集人日記」になっている念の入りよう。
 つまりは1冊が他人の生活の具体的なかたまりになっているわけで、そう考えると一瞬ひるむが、とにかく福永信の「多摩センター日記」から読む。
(おお、『アクロバット前夜』のタテ組み版が、5月に出るとか書いてある! みんな買おう。私も買う)

 こういう、自分が興味ある人の日記ならともかく、名前しか知らない人、名前も知らなかった人の日記を読んでも面白いのかというと、どういうわけだか、めっぽう面白い。
 あちこち拾い読みしたり、最初から読んだりしているうちに3時間くらい経っていたが、まだまだぜんぜん終わらない。むちゃくちゃなボリューム(2回目)。この面白さってなんなんだろう。
 もちろん読む楽しさに濃淡はあり、私の場合は「どういう美味しいものを食べてどういう旨い酒を飲んだか」みたいな記述にはあまり心が惹かれず、ほぼ読み飛ばしていくんだが、しょぼい生活(←極端な表現)の記録には、それがしょぼければしょぼいほど、克明なら克明なほど、惹きつけられてしまう。そして結局は、美味しいもの日記もしょぼい日記も、どれもこれも面白く読んでいる。
 他人の日記にどっぷり浸かる、って、人によっては「気持悪い」に分類する行為なのかもしれないが、こういうふうに読まれることに、書いた人はどんなかんじがするんだろうとちょっと不思議になった。

 各執筆者に依頼されているのは、今年の1・2月くらいの日記、だいたい1ヶ月ぶんで、時期が時期なだけに、かなり多くの人が風邪に苦しんでいる。当然、病人は症状の変化を日記に書く(ex.円城塔)。
「冬には風邪が流行る」って、もちろんわかってはいるんだが、私じしんは寝込むほどの風邪は数年に1回くらいしかひかないので、かくも多様な“苦しみかた”を綴った文章を前に、知らなかったこの世の現実をみた思いだった。
 いや、これは自分が健康かどうかという話ではないのかも。
 どれだけ自分が風邪っぴきであったとしても、自分にわかるのは自分の風邪だけで、ふつう、他人の風邪はわからない。それは、ふつう他人の生活は見えないのと同じことで、ふつう、書いた人以外には見えないのが日記のはず(当り前のことを書いています)。
 それが見えるようになっているというおかしな事態がたくさんのウェブ日記で、さまざまなブログで、本になるとこの「WALK」1冊になる。
 そのおかしな事態がどうしてこんなに魅力的なのかはわかんないんだが(おかしいから?)、「この同じ日に、あの人とあの人は何をしていたか」という目で見ると、「同じ場所で接触していた」が面白いのは当然のことながら、そこからひるがえって、「なんの関係もなくそれぞれの生活をしていた」まで面白くなってしまうところに、ヒントがあるような気もする。
 
 下手するとこれを読んで読んで読み直しているうちに連休をズルズルすごしてしまいそうな気配。この本は面白い。しかしそれは避けたい。
 ああ、日記を書くつもりだったのに日記について書いてしまった。ここには生活がない。

コメント

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面白いですよね。

この雑誌、こまばアゴラ劇場で見かけて、書いている人達の豪華さ(円城塔が書いている!)とか、その面白さに驚いていたのですけど、以前調べたとき、通販しかしていないのだと思って買うの諦めてました。書店販売開始していたとは。これで買えます。情報ありがとうございます。
推測ですが、紀伊國屋本店の店員さんの対応は、この雑誌が取次(問屋)を通さず書店と出版元が直接やり取りする、「直取引」というやり方をしているのに関係するのではないかと思います。
http://syotenjukuword.blog.shinobi.jp/Entry/379/
これだと普通、書店側の検索にでてこないので、そのせいで調べるのが難しくなりトラブルの元に……。
普通は「直取リスト」などを作って書店側も管理している筈なのですが、もしそういうのを見ずにその店員さんが判断したのなら、自店での取り扱い雑誌の把握によっぽど自信があったのだと思います。

メタ日記堪能させていただきました。