2004/04/01

その14 ― ピンチョン Lot 49

競売ナンバー49の叫び

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 第1章には次のようなエピソードがあった。これまで触れてなかったものもあるけど。

(a) エディパとピアスは、メキシコのバロ展にいったあとで別れる
(b) ムーチョと結婚する1年前にエディパとピアスは別れている
(c) ムーチョは中古車販売店に2年勤め、それからDJに転職した
(d) エディパと結婚した時点で、ムーチョはDJになって2年が経っている
(e) ムーチョがうなされる中古車の悪夢に、エディパは「もう5年も経っているのになぜ」とうんざりする

 これらを時系列に沿って整理してみたい。
 でもその前に、(e)の「5年」について補足を。中古車が持ち主の生を体現するものだというオブセッション→その3について、
[…] whatever it was about the lot that had stayed so alarmingly with him for going on five years. Five years. (p6)

《実体はなんであれ、五年にもわたってこんなに不安を感じさせるほど残っている中古車自動車売り場のこと(…)》p14/p16

とあった。この「5年」は、「中古車販売店を辞めてから5年」経っても妄想がつきまとうという意味だろうか。それとも、「販売店に勤めはじめて以来5年」、妄想がつきまとっているという意味だろうか。《残っている》(stay with)という言葉の印象からすると、前者である気がする。自信はない。

 まず(a)のバロ展を1962年のほうだと決め、ここを基準にする。
 (b)について、エディパとピアスはいつ別れたのか。「大地のマントを織りつむぐ」が、「その10」と「その11」に書いたような強い諦念をエディパに与えたとすれば、そのあともだらだらピアスと付き合っていたとは考えにくい。なので、バロ展(1962)の直後にピアスと別れ、すぐさまムーチョと出会って翌年結婚したとすると、つまりいちばん時間を短くとると、それは1963年のことになる。

 それで次に、(c)と(d)より、ムーチョは1959年途中から61年途中まで中古車販売店に勤め、その後DJになったと考える。そして(e)だが、最初に補足したように、ムーチョが中古車と職業上の縁を切った61年から5年経ったのを「現在」とすれば、それは1966年となる。

 不自然だとは思うが、(e)の解釈を「販売店に勤めはじめて以来5年」とすると、今度は「現在」が1964年になる。

 どちらにしろ、(a)~(e)をすべてそのまま収めようとすると、「現在」を志村氏のいう1965年と考えるのは難しいようなのである。

 (まだ続く)
…続き

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