趣味は引用
その12 ― ピンチョン Lot 49
競売ナンバー49の叫び

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 レメディオス・バロは1913年にスペインで生まれ、パリを経由し、第二次大戦中にシュルレアリストの仲間とメキシコまで亡命して絵を描き続けた。1963年の死の前年に三部作は完成している。やはりメキシコあたりをうろついていたピンチョンはそこの美術館で彼女の作品に出会ったらしい。オクタビオ・パスなんかもバロ好きで画集をつくったという(現在は稀覯本)。
 南米の小説でもっとも有名であるだろうガルシア=マルケス『百年の孤独』の訳書(新潮社)も、1999年に出た新装版ではバロの「螺旋の回廊」という絵をカバーに使っている
(しかし新装版は活字が2段組じゃないのが不満だよな――って、別に旧版しか持ってないからひがんでるわけではない。というか、バロの絵とマコンドの印象ってそんなに近いだろうか――って、ひがんでるわけではない)
 ガルシア=マルケスがバロについて何か言っているかは知らないが、このノーベル賞をもらったコロンビア人とトマス・ピンチョンというニ大作家の代表作をいまの日本で買い求めるともれなくバロがついてくる、というまとまり方は、愉快なような、それでいいのかと言いたくなるような気もする。
(追記:ご存知のように、『百年の孤独』は2006年に“ガルシア=マルケス全作品”の1冊としてさらにあたらしい版が出た)

 ところで、日本でも1999年に新宿の伊勢丹美術館でバロ展が開催されている。ネタ元である絵の実物が見れる、なにしろ実物というのはかつてメキシコでピンチョンが見たのと同じものなのだ……というミーハー根性に動悸を起こしつつ行ってみたところ、三部作中の13はあったのに、肝心の2)「大地のマントを織りつむぐ」だけは展示されていなかった。
 資料によれば、「大地のマントを織りつむぐ」はどこかの美術館ではなく「個人蔵」ということで、この所有者が展覧会への貸し出しを許可しなかったのかもしれない。ほかのバロ作品がたくさん見れたとはいえ、これでは片手落ちである。残念で、その独り占め「個人」(←想像)に怒りを覚えながら売店でバロ作品のポストカードを買いあさって帰った。

「大地のマントを織りつむぐ」を所有しているのはトマス・ピンチョンその人ではないか――という噂があるのを知ったのはそのあとだった。

…続き
コメント
この記事へのコメント
はじめまして
こんにちは、メキシコとピンチョンについて検索していたら、こちらに辿り着きました。
ピンチョンの記事、楽しませてもらいました。「ニ大作家の代表作をいまの日本で買い求めるともれなくバロがついてくる」というあたりでは、笑いましたが。・・・リンクさせていただきました。また来させてもらいます。
2012/02/18(土) 15:59:08 | URL | jacksbeans #-[ 編集]
こんにちは
おそれいります。
バロはいいですよね。また展覧会をやらないものかと待っています。
2012/02/19(日) 02:20:37 | URL | doodling #yhCASqO.[ 編集]
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