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2008/08/04

読中日記(3)


■ 自分でもよくわからない何ものかに義理立てする気持で「日の出ているあいだはクーラーをつけない」ことにしているのだが、さすがに今日はしんどかった。煮える。あと少しで日の沈む夕方6時ころ、先に私の意識が沈んだ。3時間後、畳のうえでぐだぐだになって目覚める。自己満足も皆無なので、つぎの週末は朝からキンキンに冷やしたい。

■ そんななので、パワーズ『われらが歌う時』もあまり進まず。下巻の半分くらい。黒人女が白人男と結婚するに際し、「私」たちの両親に立ちふさがった問いが、数十年して「私」の前に戻ってくる、みたいな書きかたに翻弄される。妹がああいう方向に進むとは意外だった。父親がそっちの仕事をしていたのは予想通り。
「私」の兄がメトロポリタン歌劇場のオーディションを受ける数ページには、ちょうど、歌声を「ものすごく書く」のと「思い切り省略しちゃう」書きかたの両方が並べられていた(当然、引用は前者の方が長くなる)。
《そこで、あの媚薬のような声音がまたもその効果を発揮した。兄の口から何かが出てきた。このようなものが兄の口から出てくるのを聞くのはこれが初めてだった。八小節歌ったあたりだったが、ジーナ・ヒルズは歌詞の途中ではっと悟ったようだった。[…]ジョナは彼女に魔力をあたえ、彼女はそれをジョナから受け取った。ジョナの引力に誘われて、彼の軌道内に入っていった。歌い始めた時、二人はピアノを挟んで、五メートルほど距離を置いたところに立っていた。四分ほど経過した頃には、二人はうっとりとした表情で相手に見とれながら踊り始めた。彼女はジョナに手を触れようとはしなかったが、触れたいと思っているかのように手を差し伸べたり引っこめたりした。[…]二人の間の最後の距離をジョナは敢えて詰めようとはしなかった。数人の聴衆を前に、白昼堂々、最も危険なタブーを犯そうとしているのかもしれない、と考えるだけで彼女の声はさらに色気を増した。
 ジョナは最初は楽譜を見ながら歌っていた。しかし、場面が怒濤のごとく進行するに従って、徐々に楽譜から目を離して歌うようになり、最後には楽譜など放り出してしまった。ジーナ・ヒルズが高音の長丁場に突入し、彼女の顔が紅潮した。ジョナの荒波のような声は勢いをぐんぐん増していき、ついには、周囲にいる人々は彼らの世界から消え去り、彼らは二人きりで、裸のまま宙を舞い、人間の肉体に可能な、最も崇高な形態に欲望を昇華した。時は一九六七年。いみじくも最高裁が、ジョナはこのイゾルデと同じ肌の色をした女、父と同じ人種に属する女と結婚してよいという判決を出した――全米三分の一の州ではいまだに非合法だったが――年にあたった。》下巻、pp101-2

《ジョナと私はいつものように所定位置に着いた。何度も繰り返してきた動きなので、私は思わず客席に向かってお辞儀しそうになった。ジョナは当たり前のように芝居じみた感じで私の方を振り返ると、こちらを見つめ、息を吸い込み、知覚できないほどわずかに宙に浮き上がると、表の拍子に合わせて、私の手を握り、あそこへ行ってしまい、「時間が静止」した。そして、この曲が名指しする沈黙の中へ帰還して、演奏を終えた。私はピアノの蓋を軽く叩いて、クリスピン・リンウェルを見た。彼は涙目になっていた。私の人生よりも長い歳月にわたって、喜びのために音楽を聴いたことがなかったこの男は、三分間だけ、自分がどこからやってきたのかを思い出していた。》p103

 どっちが好みかといったら、私は後者の「書かないことで、書いちゃう」方にゾクゾクするものだけど、考えたら、前者も歌声を書いているわけではないのだった。当たり前か。


■ 昼ごはんも夜ごはんもそうめんにした。スーパーで138円の「九条ねぎ(刻み)」を買ったらそれだけでおいしいのでおどろく。「九条ねぎ」は「きゅうじょうねぎ」ではなく「くじょうねぎ」と読むのをさっき知った。当たり前か。

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