趣味は引用
「Coyote(コヨーテ)」No.26(2008年4月号)
Coyote (コヨーテ)No.26 特集:柴田元幸[文学を軽やかに遊ぶ]
スイッチ・パブリッシング


 大判で表紙がツルツルで写真がいっぱい、「旅行」ではなく「旅」がテーマ、そんな雑誌で柴田元幸の特集。これは、半年くらい前にポール・オースターの『シティ・オヴ・グラス』を、柴田訳「ガラスの街」として一挙掲載した雑誌でもある。
 そりゃ私はミーハーな柴田ファンだが、本人の生い立ちだとか、自宅のグラビアにまで興味があるかといえば「なんかそれはちがう」のである。そう思って歯噛みしている人は日本中にいるだろう。かりに本人がサリンジャー並みのどこへも出てこない人間であったとしても、たとえばバーセルミの短篇「学校」の翻訳『Sudden Fiction2』所収)ひと文字ひと文字が動かないならそれで十分だと思っているわけである。トークショーには行くけど。ところが、ある翻訳家の方のブログで、たいへんな記事が載っていると知りあわてて買ってきた。それはたしかに、90ページにあった。

 スティーヴン・ミルハウザーが、柴田元幸のことを書いたエッセイ。訳してるのは岸本佐知子。

「おれのための企画か。二重三重に」と思ってしまう私のような人間が、やはり日本中にいると思う。“自分の小説を訳してくれる、モト・シバタ”について寄稿している作家は、ほかにもスチュアート・ダイベック、バリー・ユアグロー、ポール・オースターといたが、ミルハウザーのがいちばん感動的である。そう、私は最初の3行で感動してしまった。ミーハーでよかった。
 ほかにも、この雑誌の編集長(新井敏記)による柴田インタビューはたんなる相槌を打つのにとどまらず、答えの先にある話を引き出していて、なにより、柴田元幸じしんが訳したのではない小説についても多くを語らせているところが面白かった。トルーマン・カポーティについての、こんな感想をメモ。
《「ミリアム」あたりは名作ということになっているし、すごくいいとは思うんだけど、主人公は怖がっていてもカポーティが怖がっている感じがしない。操作している感じ。でも「無頭の鷹」は本人もおののいている気がする。》p81

 つまり、この雑誌は「買い」だった。食わず嫌いはいけない。
 反省し、謹んでおすすめする次第。
コメント
この記事へのコメント
はじめまして。
Coyoteを読まれた方を探してこちらに辿りつきました。
Coyoteは創刊号から読んでいます。旅と文学と・・ジャンルは様々ですが、稀有な存在ですね。
柴田氏を全く存じ上げないくらい文学には疎いのですが、柴田氏の訳本を読んでみようかと思っています。

では。唐突に失礼しました。
2008/03/22(土) 08:14:26 | URL | sora #YpqZtgVo[ 編集]
こんにちは
私の方は普段の「Coyote」がどんな雑誌が存じ上げないのですが、この号の充実ぶりからして相当「読みで」のある雑誌なのだろうと推察されました。
柴田元幸から入る海外文学への入門書(まわりくどい)として最適じゃないかと思った次第です。
2008/03/27(木) 23:13:18 | URL | doodling #OtUrN.LY[ 編集]
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