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「ユリイカ」2008年3月号

ユリイカ 2008年3月号 特集=新しい世界文学

青土社

「特集*新しい世界文学」。部屋に閉じこもり、すみからすみまで読んだ。

 青土社のサイトで予告を見てから期待していた目玉のひとつは、若島正+管啓次郎+桜庭一樹の鼎談で、それにより、やっぱりあれこれそれは面白いようだ、読まねば、というか読みたい、と身悶えしたのだが、この鼎談じたいでもっとも元気に見えるのは、管啓次郎だった。
 鼎談のタイトルは“「世界文学」から「文学世界」へ”で、この人、何気ない感じでいきなりこんなふうに話しはじめる。
 「世界」かあ。いきなりいわれると絶句しますね(笑)。完全にフラットな砂漠に立って、地平線までの距離を測っても、せいぜい四・五キロしかない。その三六〇度の砂漠の中でぽつんと立って、足元の砂を一握りすくってそれを「世界」と呼んでみても、ほとんど意味はないですよね。でもみんながそうせざるをえないのは、それ自体一種の言語的なトリックなのかなという気がします。つまり「世界」なんてどうしたって語れっこないんだけど、誰もがその観念を完全に捨て去ることもできない。「世界」という言葉を知った以上、それを考えざるをえない。そして「世界」という実体は、とらえきれない大きさをもって現実にある。そこで書かれ、あるいはアーカイヴとして所蔵されている「世界文学」の作品も、すさまじい数量に達している。するとはたしてわれわれの目や耳が届く範囲でどれほど「世界」をカバーできるのか、はなはだ心許ないのですけれども、ともかくやってみましょうか。[…]》pp34-5

 まえに『コヨーテ読書』(青土社)を読んだときも思ったけど、この人の言うこと・書くことはものすごく詩情にあふれていながら、同時にこれまた、ものすごく風通しがいい。読んでいると気分がよくなる。何でも出来そうな気がしてくる。身悶えする以外に何をするわけでもないのだが。
 あと、「イサベル・アジェンデのどんなところが魅力?」と訊かれた桜庭一樹が、《ガルシア=マルケスへのファン心みたいなところでしょうか(笑)。》と答えているのにプロ根性を見た。私は『赤朽葉家』も読んでいないので、ここでも、読まねば、というか読みたい、という気持に。
 雑誌の最新号からあんまり引用するのはいかがなものかと思わなくもないが、管啓次郎の発言をもうひとつ。
《[…]文学ってよくアイデンティティつまり自己証明の手段のようにいわれるけど、ぼくは文学というものは読むほうにとっても書くほうにとっても自分のアイデンティティをなくすという作用のほうがずっと大切だと思っています。つまり、文学とは、自分が男であろうが女であろうが、若かろうが老いていようが、どこの出身だろうが関係なく、その中で別の存在になっていくための場所であり装置だろうということ。》p42

 期待していた目玉のもうひとつは、もちろん、海外作家の創作アンソロジーだが、その前に、岸本佐知子へのインタビュー“わが世界文学けもの道 そしてさらなる密林へ”というのも面白かった。
 タイトルからわかるように(わかるだろうか)、これは岸本佐知子の仕事歴を振り返るところからはじまるのだけど、インタビューしている山崎まどかという人が岸本佐知子と旧知のあいだがらのようで、後半は、自分の読んで面白かった小説(未訳)をお互いに紹介しあっている。それがもう、どれもこれも読まねば、というか読みたい、と思わせるもので、だれか岸本佐知子を5人に増やしてもらえないだろうか。なかでもいちばんツボに来たのは、山崎まどか紹介になる、Tao Linという作家のEeeee Eee Eeee 。すばらしすぎるので引用。
《―― これは今の日本で受けそうですよね。高学歴低収入の男の子が主役で。彼は故郷に帰ってピザ・ハットで働いているんですけど、やさぐれていて、ジュンパ・ラヒリがすっごく嫌いなの(笑)。別れちゃった女の子のこととかうじうじ考えている合間合間に「ジュンパ・ラヒリ、何だそれは? 名前か?」とかジュンパ・ラヒリへの呪詛が出てくる(笑)。そんな感じで田舎で暮らしているうちに、急に熊がでてきて、車のドアをはずされて地下の国に拉致られちゃう。それで熊の住んでいる地下世界にはイルカも住んでいるんですけど、その熊とイルカがやたらと彼の日常にからむんです。イルカは生きる理由が見つからないとかそういう形而上的な悩みですさんでいて、いろんなセレブリティーを誘い出して殺しているんです。ウォン・カーウァイとか(笑)。うまく説明できないんですけど、一種の青春文学なんですね。》p188

 いや、こんなうまい説明ないだろうと私は思う。当の本はこれなんだが、これも含め、ふたりとも洋書はかなりの割合で「ジャケ買い」してるのも意外というか納得というか。

 長くなったので、明日に続く。管啓次郎とTao Linのどちらにも、私は惹かれます。

…続き

 追記:→自分でも読んでみた
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