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「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる その79

[前回…]

 語り手の「私」こと、アルコフリバスがパンタグリュエルの口のなかから出てきたあとでは、残された物語は多くない。

 法外に大きな巨人の口のなかを描き、それによってその世界をさらに大きくしていくうちに、ラブレー自身が未練を感じたのか、第33章は再びパンタグリュエルの体内に戻っていく。
《それからほどなくして、パンタグリュエルは病の床に臥す身となったが、胃の腑の工合が非常に悪くなり、飲むことも食うこともできなくなったが、災厄はたった一つだけやってくるものでは決してないために、痳疾にも罹ってしまい、諸君の想像以上に苦しんだ。》p236

《諸君の想像以上に苦しんだ。》には一瞬「やる気あるのか」と思ったが、そのあと、侍医の飲ませた利尿剤の効果でパンタグリュエルは灼熱の尿を排出、それが各地に流れていって「温泉」というものになった、と書いてあるのでOKである。私は熱尿[ショード・ピス]なる語をはじめて見た。

 医師たちは巨人の胃を掃除しなければならないと考え、そのために、大きな真鍮の球を17個作らせた。球の内部は空洞で、ばね仕掛けの扉がついている。パンタグリュエルはこれを丸薬のように飲み込むのだが、そのなかには堤燈・松明を持った家来が何人も入っており、主君の病んだ胃まで到着すると扉を開けて外へ出た。
《そして、一同は半里以上も[腐敗した体液がどこにあるかと探しまわった。]恐ろしい奈落へ下って行ったが、臭気濛々として瘴癘[しょうれい]の気が立ちこめている有様は、メフィティス女神にもカマリナ沼にも、またストラボンの記述したソルボンヌ沼にもいやまさる物凄さ、一同が心臓や胃の腑や酒壺(頭のことをこうも呼ぶが)に十分に毒消しを施していなかったら、この呪うべき濛気に当てられて、息は詰まり悶絶してしまったことだろう。おお何たる臭気! 何たる蒸気! 若い伊達女どもなどの口蔽いに塗りたくってやるにはもってこいだった!》p239

 たとえがよくわからないものの、語り手が興奮しているのはよくわかる。興奮するあまり、最後の一文には場違いな恨みまでこもっているように見える。ラブレー、「若い伊達女」が嫌いか。現代に生きていたら「スイーツ(笑)」とか面白がっていたんだろうか。
《それから手探りをしたり鼻をくんくん言わせたりして、糞便や腐敗した体液に近づいていったが、とうとう汚物のすばらしい山を発見した。そこで、人足どもは鶴嘴[つるはし]を振るってそれを掘り起し、他の連中は円匙[ショベル]を振るって籠を充たした。そして、すべて十分に清掃してしまうと、皆はまたもとの球のなかへ戻った。そうすると、パンタグリュエルは懸命になってげろを吐き、わけなく一同を外界へ出した[…]》pp239-40

 なぜ胃のなかに糞便の山があるのか、と目をむいてしまったが、落ち着いて読み返してみるに、これはおそらく、胃の活動を妨げている障壁を取り除くため家来たちは腸まで下りていってまた帰ってきた、ということだと考え直した。マクロの決死圏である。ともあれ、これによってパンタグリュエルは全快し、療養に入った。

 そしてこれが、『第二之書』におけるパンタグリュエル最後の姿なのだった。
 続く第34章は、語り手「私」から読者への、お別れの挨拶である。

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