趣味は引用
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる その67

[前回…]

 先週の「タモリ倶楽部」。高校の頃ジャーマンスープレックスが流行って、何十回と投げられているうちに受身をとるのがうまくなっちゃたんですよ、とうれしそうに語る安斎肇にタモリが一言、「おれの高校の頃は、なんにも流行んなかったなあ」。

 押し寄せる六百六十騎の乾喉人兵を見て、パンタグリュエルが立ちあがる。自分ひとりで戦うから、みんなは船に退きあげ休んでいてくれよというのだが、パニュルジュはじめ家来たちは、逆に殿こそ退いてください、自分たちの腕前を御覧に入れましょう、と申し出る。
《さてパニュルジュは、船の大きな綱具を二本引っ張り出した。そして、船橋の巻轆轤[ろくろ]にこれを結びつけてから陸へあげ、一本の綱具を遠くまで引いていって大きな輪を作り、そのなかにもう一本の綱具でまた輪を作ったが、エピステモンにこう言った。
 ――あんたは船に乗っていてくださいよ。そして、私が合図をしたら、船橋の巻轆轤をぎりぎりまわして、この二本綱を手もとに巻きよせてくださいな。》第25章 p182

 ほかふたりの仲間、ユステーヌとカルパランがおとりになって、敵兵をうまく輪のなかにおびき寄せてから綱具をがらがら巻き取ると、二本の綱は馬もろとも敵を地面へすっ倒す。そんなにうまくいくのか、と思っていると、敵は敵でやっぱり剣を抜き綱を切りにかかるものの、《パニュルジュは、予め撒いて置いた火薬に火をかけ、その場で敵兵を全部地獄堕ちの魂のように焼き殺してしまった》。
 早。綱の意味はあまりなかった気もするが、「地獄堕ちの魂のように焼く」、という形容はいちどどこかで使ってみたい。これで六百六十騎中の六百五十九騎までが死に、たったひとりだけ生き延びた敵兵もすぐに掴まえられた。上々の首尾に大喜びしたパンタグリュエルが何をするかというと、その場で酒宴を開く。
 主君が主君なら家来も家来で、カルパランは各種の鳥を150羽ほども獲ってくるわ、兎から狐から獣を蹴り殺してくるわで、みんなそれぞれに皮を剥いだり火を用意したりして大いに盛り上がる。だからこの人たちにとっては、戦闘と酒宴がいっしょになっている。
《それから酢をふんだんにつけての大饗宴。遠慮する奴は悪魔にくれてやれというしだい。一同がぱくぱくがつがつ喰う有様は、見るだに盛んなものだった。》第26章 p186

 なんだかこの調子だと、パンタグリュエルが御自ら出てこなくても、家来たちだけで乾喉人に勝てるんじゃないかという気がしてくる。たとえそうでもパンタグリュエルには見せ場が用意されていると思う。というのは、捕虜から聞き出した敵の勢力が、なかなかたいしたものなのである。
 なにしろ、まず、巨人が三百人いる。巨人て。しかし、パンタグリュエルが巨人なんだから、敵に巨人がいてもいい道理なのだろう。その隊長・人狼[ルウ・ガルウ]は神話に出てくる鉄床で身を固めているそうで、ほかに控えているのは十六万三千の歩卒、一万一千四百の騎馬武者、三千六百の大臼砲に八十一万四千人の工兵、加えて女神のように美しい十五万のお女郎衆。
 ぜったい冗談で付け足された最後のものにだけパンタグリュエルの家来たちは食いついて、「おれの短刀で血祭りにあげる」だの皮算用が飛び交い、ますます気炎があがるのだった。まあ、飲んじゃってるしね。ところが、
《 ――さらば、皆の者ども、(とパンタグリュエルは言った、)いざ出動いたそうぞ。》p190

 はじめの戦闘から切れ目なく続く酒宴のあと、この人たちは眠ったりもせず、そのまま進軍していくらしい。ということは、クライマックスも近い予感がする。

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