趣味は引用
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる その59

[前回…]

「言葉を発することなく、ただ単に身振りのみにて討論したい」という豪井物成[トーマスト]の申し出を受けて、まずパニュルジュが相手をすることになる。パンタグリュエルは審判役をつとめる。
《さて満座の人々は、水を打ったように鎮まりかえって耳を傾けていると、例のイギリス人は、両手を離れ離れにして宙へぬっと立てたかと思うと、指の先を合わせてシノン地方で牝鶏の尻と呼んでいる形を作り、爪と爪とをこつこつと四度打ち合わせた。それから、さっと両手を離し、片ほうの掌を、もう一方でぴしゃりと打った。更に再び、前と同じように両手を触れ合わせ、二回に亙って爪を打ちつけ、手を離しながら改めて四度掌を叩いた。それから、また元通りに手を近づけ、恭々しく神に祈念するかのように、両手を伸ばして、これをぴたりと合わせた。
 パニュルジュは、突然右手を宙に挙げ、その親指を右の鼻の孔に突っこみ、残りの四本指を伸ばして鼻の先へ大きいほうから順々に平行に揃え、左の目をぴったり閉じたまま、右の眉と眼蓋[まぶた]とをぐっと引きさげるようにして流眄[ながしめ]を送った。それから、左手をぐんと突き出し、その親指を立てたまま、残りの四本指をぎゅっと揃えて伸ばしたが、右手の位置の真前にこの左手を突き出し、両者の間には、一肘尺半ほどの隔たりを置いた。それから、両手をそのままの形で下へ垂らし、最後に、まるでイギリス人の鼻を真正面から狙いでもするような風に、両手を正眼に構えた。》第20章 pp150-1

 説明はない。ごくたまに発される、掛け声のような短い言葉をはさみながら、身振りによる討論合戦は6ページほど続き、両者の一挙手一投足が正確に丁寧に、じつに細かく描かれるが、一切の説明は省かれている。当人たちには何らかの意図がはっきりあってやっている動作なのに、余人にはまったく意味が伝わらない。ナンセンスな光景だ。
 こうなると、ただ読むしかない。2人が言葉を使わないせいで、かえって、文章(言葉)による記述なるものが生のかたちであらわになっているように見えなくもない。しかし読んでいる私にとって、ナンセンスは「面白がる」のと同じか、それ以上に「耐える」ものでもある。作中、どういうわけだかわからないまま、徐々にパニュルジュが優勢になっていき、押される格好の豪井物成[トーマスト]は、たまらず盛大な放屁と共にお漏らしをして、その悪臭で観客の顔をしかめさせる。例によって汚いギャグなわけだが、不思議と私はこの学者に同情した。
《これに対してパニュルジュは、総飾りつきの長い股袋[ブラゲット]を引っ張りあげ、一肘尺半もこれを引き延ばし、左手で宙に支えながら、なかへ入れてきたオレンジを右手で取り出した。そして、これを七度に亙って空へ放りあげ、八回目に右手で握り締め、じっとこれを捧げ持った。それから、その見事な股袋を豪井物成[トーマスト]に見せながら、これをぶらぶらゆすり始めた。》p154

「股袋」についてはこちら(→その7)。この身振りも意味不明ながら、何か腹立たしい気持になるのはまちがっていないと思う。
 討論はもう少し続いて、それから唐突にパニュルジュの勝ちになる。パニュルジュは勝利のガッツポーズならぬ、勝利のアッカンベーを決める。なんだこの試合。
 豪井物成[トーマスト]は潔く負けを認め、お漏らししてから着替えた描写はないものの、パニュルジュとパンタグリュエルをほめたたえて去る。いや、去る前に、この男はパンタグリュエルから誘われて、おおいに酒を呑み交わしたんだそうである。

 ……何の関係もないが、今日の分を書いているあいだに見つけたものをこっそり貼っておきたい。この番組好きだった。(ニコ動より)

 「占い師」
 http://www.nicovideo.jp/watch/sm51054
 「森のくまさん」
 http://www.nicovideo.jp/watch/sm52530
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。