趣味は引用
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる その54

[前回…]

 うちの液晶モニターは、もう半年以上前から様子がおかしいのをだましだまし使っていたのだが、最近、本格的に耐えられない色調をかもし出すようになったので、いやいやながら買い換える。新品の電源を入れてびっくり。このブログ、こんな色だったのか。はじめて見た。もしかすると前のモニター、ブログはじめたときにはすでにおかしかったのではないか。

 他人に伝わらない私の驚愕をよそに、パンタグリュエルはすくすく育っていた。学問をする歳になると、お供といっしょにあちこちの学都を遍歴してまわることになる。
 そして各地で、大学生が先生を「生きながら火焙りにしてい」るの見たり、医学に興味を持ったり失ったり、法律の本は「素晴らしく威風堂々として高価な黄金の麗しい衣のようなものだが、うんこで縁飾りがしてある」と思ったり、あるいは、パリから来た、ラテン語交じりの“変体フランス語”で喋る学生に遭遇したりする。
《――[…]そのパリでだな、あんた方書生さんたちは何をして時間を過して居られる?
 すると、学生は答えた。
 ――我ラ旦明ニマタ暮陰ニ塞夸奈ノ流レヲ跨越シ、市里ノ衢巷衢涂ヲ徘徊シ、拉丁ノ辞薄ヲ弄舌シ、且ツハ佯リナキ真個ノ恋愛児トシテ、一切ヲ決裁シ一切ノ形相ヲ纒イ一切ヲ産ミナス女性ノ慇懃ヲ捕捉ス。時到レバ[宋加雅、馬康、屈得薩克、波旁、(具楽地寧)、有竜、(具留寧樽)ナドノ町ニアル]春鬻井魚洞ヲ訪イ、維那ノ恵ミニ羽化登仙シテ似指ヲバ、カノ温情ノ傾城ノ汚辱ガ丘ノ深宏ナル岩窟ニ潜入セシメ、次イデ松毬亭、城屋、馬革達雷那亭、牝騾馬亭ノゴトキ青旆掲グル料亭ニテ、旱芹ヲ挿メル羯ノ見事ナル肩肉ヲ餤ウ。[…]》第6章 pp48-9

 こういう返事にパンタグリュエルはブチ切れるのだが、いま引用した私もその気持は百パーセント理解する。書き写すのにえらく手間がかかった。本文ではこのうえルビも溢れかえっているのだが、もうそれはパス。
 しかしルビといえば、このすぐあともすごい。
 パンタグリュエルはパリに赴き、そこにあるサン・ヴィクトール図書館の蔵書に感歎するのだが、ここで列挙される架空の書名がいちいち凝っていて、その数はおよそ140。たとえば――
 『勇士の象睾丸』

 『陣痛に悩めるポワシー尼僧院の一尼僧に現れし聖女ジェルトリュード』

 『高砂屋嚢包[めでたきごしゅうぎのふくろづつみ]

 『戒鞭哀尻当[いましめのむちあわれしりにあたる]

 『恥哉靴底尻叩[はずかしやくつぞこにてしりをたたかれ]

 こんなのはまだかわいい方で、長大なものだと、これくらいになる。
偉名赫々タル両股法学博士銭掻盗郎先生著『継接肝要アコルソ法学註解迷言ニ関スル明晰無上ノ新論考』[プレクラリンミ・ユリス・ウトリウスクエ・ドクトリス・メーストル・ピロテイ・ラクエデナリ・デ・ボベリナンデイス・グロサエ・アクルシヤネ・バグエナウデイス・レベテイテイオ・エヌキデイルクリデイシマ]

 これ、ルビ打つ必要はあったんだろうか(そして、それを書き写す必要も)。
 なんだか徒労感に包まれたので、次回に続く。

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