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2007/08/27

「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる その53


[前回…]

 前回のパンタグリュエル誕生シーンでは、難産のために死んでしまった母バドベックを「それはさて置き」で片付ける語り手に感じ入ったのだったが、続く第3章では、父ガルガンチュワが「びっくり仰天し当惑し」ている。
《その理由は、一ぽうでは妃のバドベックが死んでしまったし、他ほうでは実に見事な逞しい息子のパンタグリュエルが生れたので、何と挨拶してよいものか、どうしたらよいものか判らなかったからであり、その心を紊[みだ]していた迷いは、妻の死を悲しんで泣くべきか、或いは、息子を得た欣びに笑うべきか判らないということだった。どちらの場合にも、立派に筋の通った理屈があったので、息も詰まるような苦しさだった[…]》p35

 で、結局、どちらの感情を優先したか。
《[…]おお神様、何をいたした罪科で、かような罰を下されました? なぜ妻よりも先に、このわしを死なせてはくださらなかった! 妻なくして生きることは、ただ悲しみ窶[やつ]れて行くだけでござりますからなあ。ああ、バドベック、いとしい奴よ、大事な奴よ、可愛いお万古よ、[…]二度と再びお前には会えんのじゃ! ああ可哀そうなパンタグリュエル、お前は、やさしい母親を、やさしい乳母を、大事な婦人をなくしてしもうたのだぞ!》

《――は、はあ、可愛い息子、(と言った、)わしのふぐり、わしの小ちゃな足、お前は実に可愛いぞよ。こんなに見事な、こんなにうれしげな、こんなににこにこした、こんなに可愛い息子をお授け賜った神様の御恩は、金輪際忘れられぬわい! わっは、は、は、やれ、うれしや! 酒を飲もうではないか! あっは、は、めそめそごとはすべてやめじゃ。極上のとって置きのを持ってまいれ。》

 どちらも表明したのである。正直な人だ。しかも、ふたつの感情がちゃんと対応していることから言って、几帳面な人でもある。

 たいへんな犠牲を払ってこの世に登場してきたパンタグリュエルは、毎食ごとに4600頭の牝牛の乳を飲み、隣国じゅうの鍋屋からかき集めた鍋で煮たお粥を石の樽に入れて喰らう。その樽さえ噛み砕いてしまう。
 ある時は、牝牛から乳を飲んでいる最中に、その「乳房の二つと腹の下半分を、肝臓腎臓もろともに、むしゃむしゃ食べてしまい」、まわりの者に牛から引き離されてもなお、手に残っていた脚膕[ひかがみ]を食べてしまう。牛にはなんとも気の毒な話だが、どこを食べられたかわからないまま読み過ごしてしまうといっそう気の毒なことになると思うので、ちょっと大きくしてみよう。

 脚膕[ひかがみ]

 辞書によると、「膝のうしろのくぼんでいる所。」だそうである。これだけでなく、きょう書いたぶんでは、「紊[みだ]して」「窶[やつ]れて」も、IMEの手描きパッドで探さないといけない漢字だった。せっかくなのでこういうのはちくちく単語登録しているが、いずれまた使う機会が1回でもあるとは思われない。それはいい。パンタグリュエルが牛の脚膕を食べた話だった。
《骨を取りあげようとすると、まるで鵜が小さな魚でも呑むように、つるりと嚥みこんでしまって、「うま! うま! うま!」と言い始めた。つまり、まだパンタグリュエルはよく口がきけなかったので、大変うまかったし、もっと食べたいということを判らせようとしたからである。》第4章 pp39-40

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