趣味は引用
柴田元幸トークイベント@立川

 きのう、いやもうおとといか、とにかく日曜の午後、『囚人のジレンマ』の感想をまとめてアップしたのには理由があり、あのあと立川まで、オリオン書房「柴田元幸先生トークイベント~R.パワーズ『囚人のジレンマ』を語る~」を聞きに行くことになっていたのだった。話を聞いてしまったら、聞いた話しか書けなくなるような気がしたので大慌てで書いた(さっき分割した。誤字が多かった)。

 それで日曜夕方の立川であるが、正直、私は立川のことを何も知らなかった。立川すごい。駅前すごい。日本の未来は立川になる。

 柴田元幸の話はまず、去年シンポジウムで日本に来たパワーズ本人と一緒に安いネクタイ屋をさがして雨の渋谷を歩き回った話からはじまり、そういえばカズオ・イシグロも来日したときネクタイを気にしていて……と続くので「雑談か?」と思ったら、ちゃんとふたりの作家のものの見方までつながっていくので舌を巻いた。いうなればどちらも文化人類学者、とか。
『囚人のジレンマ』からは、「一九四〇-四一年」の章、9ページ分がまるまる朗読されて、これは結構長いのだが、やはりパワーズの文章の流れ、話のもっていきかたを見よ、ということである。家帰ったら自分でも読んでみようと思った。
 家族と歴史がクロスする話、想像力は現実からの逃避なのか物事を変革する力なのか(どっちとも取れるように書いてある)という話、20代で書いたこの小説のことを、40代になってからどう思っているか尋ねたインタビューの話など。パワーズは、世界がこのようにあることに驚きと畏怖を覚えてしまうと語っているそうで、あれだけあたまのいい人にしてこの謙虚さか、と、ますますおそれいった。

 最後に「今日の午前中まで訳してた」というパワーズの短篇(!)の朗読があった。後半だけとはいえ、文学と環境学、物語とでっちあげ、オリジナルとコピーとDNAの転写と引用、ベトコン、その他もろもろ詰め込まれた、たいへん盛りだくさんの作品。何度か笑う。そのうち全訳がどこかの文芸誌に載るにちがいないので楽しみに待ちたい。タイトルはたしか「七番目の出来事」か「七つめの出来事」だったと思う("The Seventh Event")。

 はじめて行ったオリオン書房ノルテ店はいい感じの本屋だった。何がいいって、ワンフロアなのがいい。各社の刊行案内やフリーペーパーが取り放題なのもいい。せっかくなので本を買ったら、レジの人がめちゃめちゃ丁寧なので私もかしこまってしまった。

 ちなみに柴田元幸は、パワーズが「こちらのつたない英語を聞き取って、ちゃんと感心して返事をくれる」みたいなことをうれしそうに言っていたのだが、そのような能力が自分にも十分以上に備わっているのをご存知なんだろうかと思った。質問タイムでのやりとりを見ていると、すごい早さであたまが回転しているのがよくわかる。あれは質問した人もうれしくなるだろう。だからと言って私に挙手する勇気はないのだが。
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