2004/08/05

柳下×若島:『ケルベロス第五の首』トークショウ

“『ケルベロス第五の首』刊行記念
  柳下毅一郎・若島正トークショウ@三省堂神田本店”に行く。

 これまでの少ない経験だと、こういうイベントはおおむね「本の紹介」に終始していたものだが、今日のはえらく趣きが違う。
「もう読んだ方、どれくらいいます?」という確認を入口にして、1時間半の大部分が『ケルベロス』読解(の試み)に費やされた。

 読後感どころか、「小説のなかで何が起きているか」について、当の訳者である柳下氏の見解と、希代の本読み・若島氏の解釈が対立していることが「さっき明らかになった」というのだから、「何を喋ってもネタバレじゃないんです」。
 以下、大幅に端折りつつ箇条書き。

第2話「『ある物語』ジョン・V・マーシュ作」を書いたのは誰か?

 柳下説:マーシュ博士
     「でもいつ書いたかはわからない」
 若島説:マーシュ博士に取って代わった後のV・R・T
     「正確な記憶力を持つV・R・Tが、子供の頃に母親から口伝えで
      聞かされたお話を人類学者の採集した民話というかたちで書いた」
       ↓
 本物のマーシュ博士は「ジョン」という名ではないんじゃないか?
 (マーシュ自身がフルネームを名乗る場面はないはず)
 なり代わったV・R・Tが、すべての男子の名は「ジョン」、という伝承に従いこう名乗った
 第3話でマーシュのノートから最初の三枚が切り取られている(P185)のは、ここに本当のファーストネームが記されていたからではないか?
       ↑
 ナイフより鋭利な切り口、メス?→「第五号」?
 (「第五号」がノートを読むのはありえる?)

 第1話で唐突にある「スイッチを入れるような音」(P88)は、録音機をONにしたんじゃないか? 省略されている「わたし」と父のやりとりがそこに記録されていたのでは? 第3話最後で士官が捨てるテープはこれか? ……

 自分の読みと友達数名の推測が開演前から混ざっていたところにこの両氏が驚くべき思いつきを連発するので、終わってみると、そもそも自分は何をどう捉えていたかも不明になり、いっそう「???」を増やして帰ることになった。これはかえすがえすも贅沢な読書体験、贅沢な小説だと思う。

ケルベロス第五の首

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