趣味は引用
「王と鳥」(1979)

 小学5~6年時の担任だった先生が教室で「ルパン三世 カリオストロの城」を見せてくれたとき、もちろん冒頭のカーチェイスから私たちは大騒ぎだったが、地味ながら強い印象を残したのは、クラリスの幽閉されている塔に忍び込んだルパンが公爵たちに包囲され、落とし穴に落ちるシーンだった。
 薄い緑色の床にひと1人分の真四角な穴がぱっくり開くのと同時に、ルパンは直立したままの格好で落下する。「落下」というより「そのまま下方移動」といった感じ。その夏、プールでは「ルパンの真似」が流行った。

 もう小学生ではないので、宮崎駿作品の特徴は上下移動である、と言われて「なるほど」と思ったりもするわけだけれども、今日の昼、件の落とし穴のネタ元であるフランスのアニメ映画「王と鳥」渋谷の映画館で見てきた。「やぶにらみの暴君」というタイトルだった1953年の作品の、作者による改作完全版。それで内容はというと――
 落とし穴、落ちまくり。
 その他にも、「ハヤオ、お前というやつは」と言いたくなるシーンいろいろ。
 以前どこかで、ルパンと公爵の決闘シーン(@時計塔内部)も原点はこの映画だと聞いたことがあって、しかし私の見た限り、巨大な歯車がぐるぐる回るところなどほんの数秒映るだけだった。ハヤオ、お前というやつは。

 非日本製アニメの動きにどうも慣れない私がうっかり意識を飛ばしているあいだにもっと見るべきシーンがあったのかもしれないと思うと、ふかふかの座席もちょっと恨めしい。ハヤオの言ってたアレだからという動機で見に行った私は、結局この映画をちっともまともに見ていないのだった。映画館を出てから反省する。アニメに詳しい人なら「おお、この時代にあんな手法を!」みたいな見方もできるんだろう。ほしいもの、それは教養。

 ちなみに件の先生は、ある日の放課後、何回めかの「カリオストロの城」上映中、映画の最後、城の水門が開かれたのを衛士や機動隊員その他のみんながみんな茫然と眺める様子を左から右に映していく場面でビデオを一時停止すると、画面の一点を指さして、「ここにコナンがいる」と解説もしてくれた。当時の先生の年齢を自分が追い越すなんてことを、小学生の私はこれっぽっちも想像しなかった。
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