2004/04/01

その0 ― Thomas Pynchon, The Crying of Lot 49

競売ナンバー49の叫び

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 これからThe Crying of Lot 49Lot 49 と略記することにする。
 どう考えても、「まるで初めて読むようなふりをして進めていく」芸当はできそうにないので、先に大まかなあらすじをまとめてしまうことにした。Lot 49 は、あらすじがわかってしまうと魅力がなくなる=1回しか読めない小説ではないのだから。

 舞台は1960年代のアメリカ西海岸。主婦をしている28歳のエディパ・マースは、かつて愛人関係にあった実業家にして大富豪のピアスが死に、彼の遺言で自分が遺産の執行人に指名されていたと知らされる。架空の街サン・ナルシソに点在するピアスの所有していた地所をあちこちめぐるうち、エディパは何度となく郵便喇叭[らっぱ]のマークを目にする。
 さまざまな奇人変人に出会って話を聞くなかで、ピアスが集めていた偽造切手からも喇叭マークが発見されて、これが「トライステロ」なる謎のグループのシンボルであることがわかる。それはどうやらヨーロッパに根をもち数世紀にわたって社会の裏で工作を続けてきた反体制秘密郵便組織で、今もアメリカで活動中らしい。それでは、ピアスの遺産とは何なのか。
 暗示と啓示が増加を続ける一方、探求するエディパの心を離れないのは、これら全部が自分のパラノイア的な精神がつくりだした妄想に過ぎないのではないかという疑いである。さらには、すべてはピアスの仕組んだジョークで、自分を騙そうとする壮大な陰謀が周囲に張りめぐらされている可能性も捨て切れない。迷いながらエディパは、アメリカの繁栄の陰でうち捨てられた人びとの姿を見る。
「トライステロ」は実在するのか? 陰謀はあるのか? 遺産とはいったい? エディパにも読者にも証拠は与えられないまま、いちどは彼女に手掛かりを提供した者たちが次々と姿を消す(あるいは、消されたのかもしれない)。やがてピアスの切手が競売にかけられることになり、ある正体不明の人物が入札にやって来るという情報が入る。その男こそが「トライステロ」の使者なのか。
 何ひとつわからないまま、当日、エディパは会場に入って待つ。競売の始まる瞬間、小説は終わる。

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