2006/08/02

「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その32


[前回…]

 今日も『ガルガンチュワ物語』ではなくて、ドストエーフスキイ『未成年』を読んでいた。米川正夫訳、岩波文庫。主人公のアルカージイくんは他人の恋愛やら策謀やらの渦中にあり、中巻に入るとますますけんか腰の言い争いばかりしている。今度の相手はスチェベリコフ氏。小狡い印象を与える男で、職業はたしか医者だったと思う。
《「しかし、ぼくは、ぼくはいったいなんのために必要なんです?」
 「最も重大な問題のために必要なんです。あなたには知己があります。到るところに知己があるから、なんでも聞き出すことができます」
 「えっ、こん畜生……いったい何を聞き出すんです?」
 「つまり、公爵がその気でおるか、アンナさんがその気でおるか? それをたしかに聞き出してもらいたいので」
 「じゃ、きみはぼくにスパイになれとすすめるんですか。しかも、金のために!」わたしは憤然としておどりあがった。
 「威張らんでください、威張らんで。もうちょっとのま、威張らんでいてください、ほんの五分間ばかり」》中巻 pp75-6

 太字にしたのは私だが、「こん畜生」の挟み具合などからなにか妙なリズムができている気がする。ほかの長篇も、同じ米川訳になる岩波文庫版で読んでみたくなった。
 そして「威張らんでください」である。激昂している人間にむかって「怒らないで」「落ち着いて」と声をかけるのはもう古い。これからは「威張らんでください」でいこう。私にそう言う勇気はないけれども。

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