2006/06/20

「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その25


[前回…]

 グラングゥジエ王から派遣され、ピクロコル軍の立て籠もるラ・ローシュ・クレルモーの城にやってきてたウルリック・ガレは、ピクロコルが城門を開かないので外から演説をする。貴殿の横暴に、わがグラングゥジェは深く心を痛めている。古くからの友好国が、なにゆえこんなひどい真似をするのか。盟約とは何だったのか思い出してほしい――こんな感じで、ガレはその巧みな弁舌を十二分に発揮する。
《グラングゥジエ王ならびにその臣下の人々よりは、何ら損害も加えられず憤激の種も与えられず戦も挑まれざるにもかかわらず、一切の盟約を破棄し一切の友情を踏み躙り一切の立法を犯して、仇敵として我が主君の領土へ入寇されるとは、今や貴殿は、いかなる狂乱に取り憑かれて居られるのでしょうか? 樹てし誓言はいずこにござります? 条約はいずこ? 理法はいずこ? 人の道はいずこにござります? 神を恐れる心はいかがなされました? かくのごとき非業が、我々の行いに正しく褒賞懲罰を下し給う至高なる神及び不滅なる精霊の眼には映らぬと思召されますか? もし、かく思われるならば、これこそ誤謬と申すべきでありましょう。蓋し、一切の事象は、神のお裁きを受けるにいたるからでございます。》第31章 p150

 このような熱弁でもって滔々と訴えかけるのだが、だんだんピクロコルに説教をかましている格好になっていくのはいかがなものだろう。かくのごとき振舞いにはいずれ終末の訪れるのが世の理、栄枯盛衰の坂をあなたが勝手に転がり落ちるのは自由ですが、それにしたってうちの君主にまで危害を加える必要はなかったじゃありませんか。ま、もし、うちの国民の方に非があったと言うのなら、まず真相を究明してから抗議してもらえれば、うちの方でも御意向に沿うよう取り計らったものですのに。それがあなた、今回のやり方は何ですか。まるっきり「腹黒い暴君」じゃないですか。云々。
《即刻この地より引きあげ、道中騒擾狼藉は一切御無用、貴殿の領地へ戻られ、長くその地に止まられたく心得まするが、尚、我々の領土に加えられましたる損害の賠償として、ビザンチン貨幣千枚をお支払いあってしかるべく存じます。》p152

「腹黒い暴君」と呼ばれたピクロコルは、5ページになんなんとするガレの説得(糾弾)を、ひとことできっぱり拒絶する。
《「ほしければ取りにこい。取りにくるがよいぞ。これなる者どもは、見事な石臼や擂粉木[すりこぎ]を用意しとるぞ。小麦煎餅でも粉にしてやるわい」》第32章 p152

 きっぱりしてはいたが、言っていることは不明瞭だった。

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