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「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その22

[前回…]

 どうやら何の説明もないままに、話はいきなり前後している。
 第25章、「レルネの小麦煎餅売りたちとガルガンチュワの国の住民たちとの間に大論争が起こり、それが因[もと]で大戦争になったこと」から唐突に語られるのは、いまパリに滞在しているはずのガルガンチュワたちはおいといて、この巨人の故国近くで起きた争いごとの経過である。どこらへんでパリの話に戻ってくるのか、そもそも戻ってくるのか、一切不明のまま読み進めることにする。

 発端は、巨人国の羊飼たちのいる前を、近隣のレルネという村からきた小麦煎餅売りの一行が通りかかったことだった。「小麦煎餅」とは「小麦・卵・牛酪などで作った」一種のパン菓子、らしい。なんだろう、パンケーキみたいなものだろうか。朝食に葡萄と併せて食べると天来の美味、などとわざわざ書いてある。羊飼たちは売ってくれないかと丁寧に頼む。しかし煎餅売りは断って、あまつさえ――
《羊飼たちに罵詈讒謗の限りを尽し、彼らのことを、余計者、歯抜けのぱくぱく、赤毛の道化、助平の腎助だとか、糞たれ野郎、ごろつき、音無鑢[おとなしやすり]の猫被り、ぐうたら、へなちょこ、でぶ、大風呂敷、やくざの助、土百姓、青蠅、乞食野郎、大法螺吹き、にやけ若衆、いかさま、怠け者、悪党、薄のろ、キ印、馬鹿殿様、巫山戯[ふざけ]とんちき、自惚野郎、素寒貧のがたがた、糞飼野郎、うんこ番人などと呼ばわり、その他これに類した悪口雑言を吐いた上に、かてて加えて、貴様たちには、こういうおいしい小麦煎餅などを喰う資格はないが、籾殻混りのぼろ麵麭[パン]か、円い大きな黒麵麭[パン]くらいでありがたいと思うのが当然だ、などとも言った。》pp128-9

 言いすぎである。「うんこ番人」て何か。
 羊飼も言い返し、煎餅売りが先に手を出すも、いかんせんそこは羊飼たちのホームグラウンド。近所の農夫も加勢して、余所者の煎餅売り一同をこてんぱんに叩きのめしてから、金を払って(さらに胡桃と白葡萄をおまけに添えて)念願の小麦煎餅を奪い取った。村へ逃げ帰った煎餅売りたちは、お城に直行して城主ピクロコル第三世に駆け込み訴え。
 ピクロコルは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の羊飼たちを除かねばならぬと決意した。王は大急ぎで一軍を組織して、進軍を開始する。
《この前衛軍の兵数は、火銃兵が一万六千十四人と志願武士が三万五千十一人と算せられた。》第26章 p132

 軍兵たちは非道の限りを尽す。あらゆるものを見境なく破壊して、あらゆる家畜を掠め取り、あらゆる農作物をだめにする。農民たちは彼らに逆らうこともできない。
《人々はおのおの、狼藉を働かれながらも哀訴嘆願して、お互いに今までずっと仲のよい親切な近隣同士であったのだし、自分たちは皆さんに対して非道なことをしたり侮辱を加えたりしたことは決してなかった以上、突然このように無体ないじめ方をされるわけがないし、左様なことをする人々は、ほどなく神罰を蒙るだろうから、もっと血も涙もある取り扱いをしてもらいたいと言った。》p133

 そんな言葉にも聞く耳を持たない乱暴者たちの前に現れたのは、一軒の修道院、ひとりの修道僧であった。しかし、神に仕えるその男がこれから隣国の兵にもたらすのが果たして「神罰」なのかどうか、その点は大いに疑わしいのだった。

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