趣味は引用
「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その13

[前回…]

 ガルガンチュワが、排便後の尻を拭くのにまず持ってきたのは「天鵞絨[びろうど]の小頭布」。感想は、《なかなかようございましたよ。何しろ、絹の柔らかさで、出口のところが、とてもとてもよい気持でした。》
 それから帽子、襟巻、繻子の頭巾耳当と使っていって、ついていた金モールでお尻をすっかりひんむかれたりもする。いろんな服飾品(しかも他人の)を試してみてから、今度は方針を転換し、猫で拭いてみる。さらには、さまざまな草や葉っぱといった、植物の使用感を調べるのだった。
《お蔭様で、ロンバルディア血便症に罹ってしまいましたが、股袋[ブラゲット]で拭いたら、この熱病もなおりました。》第13章 p79

「ロンバルディア血便症」。こんなに迫力のある血便があるだろうか。「エボラ出血熱」みたいである。しかもなぜだか、股袋で治るらしい。
 あくなき探求心に駆られたガルガンチュワは、それからも敷布、クッション、ナプキン、浴衣などの布類を試していったというから創意工夫の人である。幼児とはいえ巨人の子、「猫より布が先だろう」と思う私は小人なのか。

 さて、ここで紹介される彼のひと言(三十一文字)は、私が実物の「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を手にする前から噂に聞いて知っていた、唯一のフレーズである。カミュの『異邦人』なら「きょう、ママンが死んだ」、漱石『三四郎』なら「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」に匹敵する、有名なセリフといってよいだろう。うっすら汚れた文庫本のページをめくってきて、このやりとりが無造作にぼろんと出てきたときには軽い感動があった。謹んで引用したい。
《僕は、秣[まぐさ]や麦藁や麻屑や獣の抜け毛やら羊毛やら紙などでも、お尻を拭いてみました。しかしながら、

  かみなどできたなきしりをふくやつは
       いつもふぐりにかすのこすなり。》

 次回の引用は、いつにもまして長くなる予感。

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック