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2006/05/03

「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その7


[前回…]

 幼児ガルガンチュワは、酒壺や酒徳利が叩かれて鳴る音を聞くだけでうっとりとし、《まるで天国の福楽を味わっているような様子になった》というが、「第八章 ガルガンチュワに、いかなる衣装を着せたか」に入ると、その章題どおり、父親が彼にどんな服を作らせたかが、馬鹿馬鹿しいディテールに立ち入って説明される。なにしろ巨人である。
《肌着のためには、シャテルロー布が五百丈[オーヌ]も裁たれ、そのうちの二百丈[オーヌ]は四角形の腋当て[グウセ]に作られたが、これは腋の下へ当てられた。》p54

 あたり前じゃないか、「腋当て」なんだから。いや、そんなことを言ってはいけない。註によれば、1丈(オーヌ)は約1.18メートルに相当するそうで、このような描写に私たちは、“途方もないスケールと、細かい数字”という組合せギャグの古典っぷりを感じていればいいのだろう。
《胴着[ブウルボワン]を作るためには、白襦子が八百十三丈[オーヌ]も裁たれ、腰のかがり紐[エギュイエット]のためには、一千五百九匹半の犬の革が用いられた。》

《洋袴[ショース]のためには、白いエスタメ羅紗が一千一百五と三分の一丈[オーヌ]も裁たれた。》

 しかし私たちが注目しなければならないのは、「肌着」よりも「胴着」よりも「洋袴」よりも、この部分ではないか。
《股袋[ブラゲット]のためには、前と同じ布を十六と四分の一丈[オーヌ]も切られた。そして、その形は飛迫控のようであり、見る目も派手やかに、二個の美しい黄金の輪で釣られており、この輪は七宝飾りを施した黄金の懸金で止められていたが、その懸金の一つ一つには、蜜柑ほどの大きさの大きな碧玉が一つずつ嵌めこまれていた。[…]碧玉には、自然より与えられたかのものを蹶起[けっき]させ、精気溌剌たらしめる力が具わっているからである。この股袋[ブラゲット]の隆起程度は、一杖[カンヌ]もあり、洋袴と同じく飾り穴が割られ、前と同じく青いダマス絹が膨れ出ていた。》

 「股袋(ブラゲット)」とは何なのか。まあ、何なのかはだいたい想像できるとして、当時の服にはなにゆえそんなものがついていたのか。註を見てみよう。
《股袋=braguette. 未だボタンのない時代、男子服の股間に設けられ、紐や鉤金で上へ結ばれていた。「股袋を開く」とは、「帯を解く」「ズボンを脱ぐ」などに近い意味になる。》p271

《Braguetteは、中世から十五・六世紀にかけて、男子の服装の一部をなし、股間に設けられ、洋袴の上部に紐、鉤金などによって結びつけられていた。勿論用途は明らかであるが、当時の伊達者は、このなかに財布や手帛やまた果実なども入れて、「男性美」を誇示したと。》p282

 そうですか。《また果実なども入れて、「男性美」を誇示した》。当時の伊達者もずいぶん工夫をしたものである。そのねらいが私には伝わってこないことなど些細な問題に過ぎない。ただし、ひとつだけはっきりさせておこう。
 その果実は食べたくない。
 なんだか私は、『こち亀』に出てきた“海パン刑事”を思い出した。海パンから取り出したバナナを食べる、男前のキャラだったが詳細は省く。
 話を股袋に戻せば、いまや神の装置として君臨するGoogleに「股袋」と入れて検索してみると、1560000件ヒットした。ちょっと読む気はしないが、要は、男性用ズボンを縫い合わせていくときに、ちょうど前の部分が開くので(ボタンがないから)、その隙間を隠すための袋として作られたようである。“Braguette”または“Codpiece”。以下に引用したサイトでは、「股袋師」について書かれていた。
《[…]股袋には鍵やハンカチなどの小物のほか、リンゴやミカンなどの果物まで入れられていたという。食事中に、果物を股袋から取り出して人に勧めても、無作法とはみなされなかった。》


 《無作法とはみなされなかった》のは大事なところである。たしかに海パン刑事も紳士だった。そしてやっぱり果物なのか。

《また果実なども入れて、「男性美」を誇示した》 さて、人には往々にして魔が差す瞬間が訪れる。数分前の私がそうで、ついうっかり、“Braguette”でGoogleのイメージ検索をしてしまった。やはり詳細は省いて、いちばん明瞭だった画像を貼っておく(クリックすると元サイトの記事に飛びます。服飾史を扱った立派なサイトの模様)。
 なんだか疲れてきたので今日はこれまで。イメージ検索はおすすめしません。


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