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「ガルガンチュワとパンタグリュエル」を読んでみる  その5

[前回…]

 たとえばきのうの私が部屋に帰ってきたのは日付が変わる寸前で、朝から口にしたのはコーヒーを1杯とアップルカバー(アップルパイ仕立ての重たい菓子パン。ヤマザキパン謹製)だけだったから、ふらふらするほどお腹が空いている。とりあえず冷ごはんを温め、鶏そぼろフレークを混ぜた卵焼きを焼いて、インスタントのみそ汁と一緒に食べた。朝ごはんか、と思いつつ、食べているあいだに湯をためたフロに入り、湯船でうたたねして首を痛める。煙草を2本喫って『ガルガンチュワ』を開けば、「第三章 ガルガンチュワが十一カ月の間母の胎内に宿っていたこと」はこのように始まっていた。
《グラングゥジェは、その盛りの頃には陽気な御仁であり、当時の世のなかの誰にも劣らず綺麗に盃を乾すことを得意とし、好んで塩辛いものを喰った。そのために、平生からマイヤンス及びパイヨンヌの塩豚を充分に備え、燻製の牛の舌を沢山に、旬の豚臓物腸詰[アンドウイユ]や芥子まぶせの塩漬牛肉を山のように、鮞塩辛をありあまるほどに、また腸詰類もたんまりと貯えていたが、腸詰と申しても、ボローニャ製のものではなく、(というわけは、ロンバルディヤ人の毒饅頭は恐かったからだが、)ビゴール、ロンゴールネー、ラ・ブレンヌ、ルゥエルグ産のものだった。》p34

 肉と肉と肉。たいそうなことであるよ。このグラングゥジェがガルガンチュワの父親になる。彼が娶った妻の名はガルガメル。彼女もまたおそろしく食い意地の張った女で、続く第四章の書き出しはなかなかふるっている。
《ガルガメルが子を産んだ時のこと、またその有様は下に記す通りであるが、もし諸君がこれを嘘佯[いつわ]りと思われるならば、いっそのこと肛門が抜け出るがよい!》p37

 いっそのこと肛門が抜け出るがよい!
 おそろしい命令である。目が潰れるがよい!鼻が腐って落ちるがよい! だめだ。どちらもとうていかなわない。「肛門が/抜け出るが/よい!」って、それは自動詞なのだろうか。おそるべきはガルガメル。さてしかし――
《二月三日の午後のこと、牛腸料理[ゴドビヨー]をあまり喰いすぎたために、ガルガメルは肛門が抜け出てしまったのである。》p38

 お前かよ。なんでも彼らは、「三十六万七千十四頭」の牛を屠って臓物料理を作り、近隣の町人・村人みんなを招いてさんざん飲み食いをした。出産を控えたガルガメルも、お腹に詰め込めるだけ詰め込んだ。一同、腹ごなしに出かけた野原で引き続き飲んだくれていると、彼女の陣痛が始まる。
《[…]四ほう八ぽうから産婆たちが、わんさわんさと集まってきて、下のほうを探ってみたところが、随分と悪臭を帯びた皮切れのようなものが出ていたので、てっきり嬰児[あかご]だと思ってしまった。しかし、これは上にお話したように臓物料理をあまり喰いすぎたので、――諸君が俗に「糞袋[ポワヨー・キユリエ]」と呼んで居られる――直腸が弛んだ結果、脱肛を起こしていたためだった。》第6章 p49

 牛の腸詰を食べ過ぎて、自分の腸が外に出てしまった。いま、なんとなく私は“仏に会ったら仏を殺せ”というフレーズを思い出したが、およそ関係はない。産婆のひとりが強力な収斂剤を処方すると、今度はガルガメルの「ありとあらゆる括約筋」がぎっちり締まり、開かなくなってしまった。胎児は子宮から上方に飛び出し、横隔膜を通って母親の左の耳から外へ出た。
 これがガルガンチュワ誕生の様子である。

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