趣味は引用
筒井康隆・柳瀬尚紀『突然変異幻語対談』(1988)
河出文庫(1993)

『虚人たち』、『歌と饒舌の戦記』を書いたあとの筒井康隆と、ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を翻訳中の柳瀬尚紀による、対談および往復書簡をまとめた本。
 もう日常性からかけ離れた言葉だけしか読みたくないという柳瀬と、非日常的な言葉をあくまで物語をつくるために使いたい筒井。この違いがあるために、よりすごいことをいうのは柳瀬になるが、その彼に刺激を与えてきたのが筒井の実作(「関節話法」とか)だった。お互いが相手を畏れ敬っていていい感じである。

 小説作品は言葉でできている、というのは、誰でも認める前提であるだろう。
 その当たり前の事実にこだわり続け、言葉に執着する二人が「前衛的」となる転倒が、この本では最初から最後まであらわれていて、何度読んでも面白い。出版社は定期的に続編を企画するべきだったんじゃないかと思う。一連の対話の最中に筒井はあの『残像に口紅を』(作中で使える文字が徐々に減っていく長篇)の着想を得ている。
《「饒舌」の反対だから「寡黙」になるかというと、これはいくら考えてもそうはなりません。寡黙な主人公が三人称の中に存在しても、字面が並ぶ以上寡黙な小説というのはありえないからです。》P129

 ほれぼれします。


突然変異幻語対談
突然変異幻語対談
posted with amazlet on 06.02.03
筒井 康隆 柳瀬 尚紀
河出書房新社 (1993/10)
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