趣味は引用
稽古
宮沢章夫の「富士日記2」からサイト内リンクをたどり、「PAPERS」という壁新聞形式だった頃のバックナンバーを漁ると、1997年秋の舞台稽古を記録した日記がある。号数でいうと5-7号の時期だ。
http://www.u-ench.com/kaigi/diary.html
 別役実「会議」という芝居を宮沢章夫が演出して公演する、その稽古の日々を綴ったもので、私はこの芝居を見たことがなく、台本(戯曲)も読んでいないのに、この日記はやたらと面白い。通して3回読んだが、なんで面白いのかわからないので引用だけして放り出す。
《きたろうさんが、女2を演じる池津にごく基本的なアドバイスをする。「芝居の基本だよ」ときたろうさん。つまり、セリフの音ばかりが立って、意識が見えてこないことについて。それは稽古の当初から僕も感じていたことで、うまくやろうとして作為ばかりが表に出ている。それを何度も繰り返して、細かく直してゆく。しかし、意識していればいいが、そうでないところはすぐにだめになる。ごく基本的なこと。形になる。覚えたセリフをただしゃべっている印象だ。
 とりあえずのところで、それを終え、懸案になっている男4がそこにいる者らを追いつめて行く場面。セリフごと、誰に向かって言うか、言葉のトーン、そのときどんなふうに動くか、少しずつ変化をつけてゆく作業。疲れる。
 その二つの場面をほとんど休みなしでつづけ、夕方になったので、食事休憩をとる。
 食事のあと、しばらく戸田君と佐伯を待つ。佐伯がなかなか来ないので、女2の場面、昼間と同様、代役でやってみる。
 ほうれん草のあたりがまだだめだ。
 うまく意識が出てこない。生き生きとしない。
 とりあえず、明日に持ち越し。
 男4の部分。さらにやり方を変える。セリフのトーンがべたっとして変化がないので、押すところ、引くところ、低くでるところなど、細かく変えてゆく。少し、見えてきた。とくに、男4がそれで殴られたという木の棒を道具方1に持たせるあたりなど、すごく面白くなった。それで、いままで、巻き込まれないなあと思っていたことが、ふっと解消される。あるいは、周囲の者らが、男4が示すもの、木の棒や壊れた椅子などに、いちいち興味深そうにのぞきにゆくといった、ごく単純なことで、その場がずっと生き生きとしてくる。ごく単純なことだ。
 あたりまえに考えてゆけば、できるようなこと。
 で、その二つの場面をやっているうちに、八時になった。》(10/27)