2005/09/29

文房具

 文房具好き、という人々がいる。確実にいる。
 そういう人間はすなわち文房具屋好きでもあるから、LOFTや東急ハンズに行こうものなら、本来の目的が低反発素材の枕や大きめのゴミ箱やパーティー用の付け鼻であっても、ふらふらと文房具売り場にさまよい出て、棚の品物をひとつずつ手に取り眺め続けて飽きることを知らない。結果、最初の2ページ以降は書き込みのないノート類や、似ているようで微妙に違うペンの数々、中身の入っていないバインダー、左利き用の鋏なんかが部屋にたまってくるという。コートを出すくらいの季節になればそわそわして落ち着かない。来年の手帳が店先に並ぶからだ。

 あるいは、ほんとの文房具好きは大型雑貨店の文房具売り場なんかは軽蔑しており、お気に入りのショップに通っているのかもしれない。こじんまりとしているだろうそういう店の大半は輸入製品だと思われる。本国では子供向けの安物が妙な高値で置いてあるような。店内の照明は蛍光灯ではなく傘の付いた電球だ。文房具屋であるのにシャーペンの替芯など置いていない。燃やせ。いやなんでもない。
 私の知り合いの文房具好きは、高校の頃から、ステッドラーの製図用ペンを一途に使っているらしい。緻密な図を書くはずのペンで授業のノートをとっていた。落書きの線さえ均一だったことだろう。見せてもらったそのペンは、先端が冗談みたいに細い代物で、人に頼まれ断れなくて貸してしまうと、多くの場合「折られて返ってくる、しかも“使いにくい”と文句言われる」から、悲しい思いで同じ物を買い直すという。
 かくいう私にもそういった人々に通じる血がいくらか流れているのは、こんな本に大喜びすることからいっても明らかだが、文房具へのこだわりも知識も特にない。鉛筆の芯で、FとHBだとどちらの方が固いか、しょっちゅう忘れてしまうくらいだ。唯一、ボールペンだけはこれのブルーブラックを買いだめして順に使っているが、たぶん、製図用ペンを1本買うお金で20本は買えると思う。

 ――というようなことを書いてきたのは、「雑貨飯店」というサイトにあった「文房具の冒険1994-1997」が面白かったからだった。スタンプローラーって、それは文房具なのか。