趣味は引用
感想を3つ
奥泉光『モーダルな事象』、『新・地底旅行』
町田康『告白』の感想を、忘れてしまう前に。
奥泉光『モーダルな事象』(文藝春秋、2005)
 1ヵ月以上前に感想を書くつもりだったのを思い出した。最後まで一気読みして満足、楽しめた。中盤からはトラベルミステリー(よく知らないけど)の風情もあり、いっそうどんどん読めて、そこが快感。誰にでも勧められる気がする。『文芸漫談』の十全なる実践編がこれだと言われたらいとうせいこうは怒るべきだと思うが、奥泉光は「謎が解決しない話」と「解決する話」を交互に書くとちょうどいいのではないか。読んでいなかった旧作も読むことにする。

奥泉光『新・地底旅行』(朝日新聞社、2004)
 それで読んでみた旧作ながら、こちらは「奥泉は全部読む」と志した人以外には勧められない。とにかく単調。『プラトン学園』『坊ちゃん忍者幕末見聞録』に続く、奥泉の新聞連載小説第3作だが、これらはどれも読み通すのがつらい。新聞連載とは相性が悪いのだろうか。それとも、新聞小説だからこうならざるをえないのか。

町田康『告白』(中央公論新社、2005)
 ところが、同じ新聞連載ながら、こちらは心底面白かった。全680ページ中の、うしろ260ページは書き下ろしだけど。
 明治の中頃に大量殺人を犯した男の生涯を、そこに至るまで、幼少期から語る。えんえんと語る。「自分の考えていること」と「口から出る言葉」のギャップに苦しみ続けた男の生涯を語り尽くすにあたって、町田康もまた、言葉のギャップを道具にする。「主人公の言動を伝える言葉」と「それを観察する評言」、というところですでに言葉は二重底になっているわけだが、その両方を「当時のものっぽい言葉」と「明らかに現代の言葉」のギャップでねじり、屈折させる。
 後半にいたっても文章のたくましさは変わらないものの、「ごちゃごちゃな感じ」が薄れていくのは、クライマックスへ向け筋立てがまとめられていくのからいっても仕方ないのかもしれないが、なんか惜しい、という印象。私が読み方を間違ったのかもしれない。
《明治五年の秋、熊太郎のフェイクが露見しそうになったことがあった。》P20



モーダルな事象
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新・地底旅行
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告白
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