2005/09/09

05/09/09

 知り合いの某氏が「女性もぱんいちで生活するのか」というアンケートの結果をウェブ日記上で公開しており、心中穏やかでない日々が続いている。大事なものが音をたてて崩れていく気がする。早く秋になれ。
 それで思い出したのが、村上春樹のエッセイ集『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』に載っていた一連の文章である。

 村上春樹がアメリカに住んでいたときの話。アメリカの新聞にも日本と同様、「人生相談」のページがあるが、内容は日本とずいぶん差がある。
 わけがわからなかったのは、ある主婦からの投書で、「自分はいつも全裸で家事をしているのだが、あるとき裏口から入り込んだ男にレイプされてしまい、大きな精神的ショックを受けた。どうすればいいか?」というもの。
 回答者は「たしかに気の毒だが、何も裸で家事をしなくてもいいのではないか」と答え、村上春樹もそれは正論だと思った。
《しかし物事はそんなに簡単には終わらない。数日後に、その回答に対する抗議の手紙が全米の主婦から数多く寄せられたのである。大半は「自分だって彼女と同じように全裸で家事をしている。開放的で気持ちがいいからだ。そんな当然の権利をおとしめたり、奪ったりする権利は誰にもない」というものだった。でもねえ、いくら気持ちがいいからといって、いくら開放的だからといって、全裸でるんるんと家事をする主婦が世の中にかくも多く存在していいものなのか。いったいどういう国なんだ、ここは。》

 このエッセイが連載されていたのは10年前の「週刊朝日」で、上の文章はこう結ばれる。
《ところで「私もよく全裸で家事をしている」という主婦の方が日本にもいらっしゃいましたら、「全裸家事主婦問題」を国際的にしつこく真面目に追求している村上まで是非ご一報ください。半裸でも、まあいいです。》
 そして数週間後。「私も全裸(半裸)で家事をしている」という投書が、「週刊朝日」編集部にどっと寄せられたのである。村上は言う。
《知らない私が馬鹿だったです。》

 エッセイでは続けて、「新婚2ヶ月の若妻」から「63歳、開腹手術の跡のある主婦」まで、投書の内容が生々しく紹介されている。なぜか夫がいるときはできないとか、普段は堅い仕事をしているのでストレス解消になるとか。早く秋になれ。

村上朝日堂はいかにして鍛えられたか